2004年2月15日日曜日

消去(Delete)しないリセット

--以下は書籍「リセット」(ソフトバンクパブリッシング刊)のプローモションサイトに寄稿したエッセイを転載したものです。--

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瀬戸 理

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人の過去は消しゴムで消し去ることはできない。服を着て、化粧をして、時には顔を変えて、過去を「隠す」ことはできても、「消去」することはできない。過去に見たもの、感じたもの、話した言葉、聴いた言葉のすべては、どんなに巧みに消し去ったつもりになっていても、人のDNA情報にしっかりと刻まれて、何代も先の子孫のDNAに延々と書き込まれていく。
「リセット」とは、過去の消去(=Delete)ではない。
「リセット」とは、過去という荷物を、リュックにパッキングし直して、自分の両肩にしっかりと背負った上で、新しい道を歩き始めることだと思う。

私は2度の債務整理を経験している。
私個人の借金の整理と、私が所属していた会社の自己破産手続きだ。
法的には、会社も個人も一個の「人格」として扱われる。企業は「法人」と呼ばれ、個人は「自然人」と呼ばれる。
「自然人」である私個人は、債務整理をしたことで、まさに家計を「リセット」することができた。生活にゆとりを持ち、貯金をすることもできるようになった。
しかし同じ「人格」であっても、「法人」である会社の方は、自己破産をしたことでこの世の中から抹消されてしまった。創業社長が会社を興すために投じた私財も、10数年の営業実績も、完全にDeleteされた。
私が債務整理しなければならないほどの多重債務に陥った直接の原因は、この会社の破産によって職を失ったことにある。裁判所で会社の破産宣告を受けた時、経営に失敗した社長を恨めしく思う気持ちも少しはあったが、それよりも、この世から消去された会社の、断末魔の叫び声が切なかった。
本当は消去されたくなかったかもしれない「法人」という「人格」のことを思うと、借金を重ねた自分の過去を、債務整理によって隠したり消したりすることは、絶対に許されないと思った。
愚かにも借金を重ねてきた自分の過去を振り返り、徹底的に反省をし、インターネット上に自分の借金の経緯を公開するところから、私の債務整理という「リセット」は始まった。

「自己破産」という借金整理の手段を、「借金がチャラになる」と安易に考える人がいる。確かに破産によって、借金返済の「義務」は無くなるが、「返しきれないほど借金をした」という事実が無くなるわけではない。
自己破産に至るほど借金を重ねた、という事実を受け止め、背負い続けていく覚悟が無い限り、自己破産という手段は取るべきではない。
近年、2度目の自己破産をする人が増えているという。
「借金を重ねた」という過去をしっかり背負っていなかったからこそ、再びなぞるように同じ過去を作ってしまうのだ。
破産宣告は何度でも受けることができるが、返済義務が免除される「免責」は10年に一度しか受けることができない。

過去を消したり、誤魔化したりすることは本当の「リセット」ではない。
過去を背負い続けているからこそ、一度通った同じ道に迷い込むことなく、新しい道を進んで行くことができると思うから。