2004年4月19日月曜日

マスコミへの苦言

このようなサイトを運営していると、時々様々なメディアから協力の依頼が来る。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など色々な種類の媒体が、取材依頼や記事の転載、コメントの執筆などを依頼をしてくる。
私が雑誌の編集者やライターをやっていたのは、まだインターネットがほとんど普及していない1990年代前半だったので、ネットから「ネタ」を探す、ということはなかったが、今はマスコミ関係者にとっても、インターネットが大きな情報源になっているのだと感じる。
協力できる依頼にはなるべく協力しようとは思っているのだが、実際には、全体の依頼数の約3分の1程度にしか応じていない。
残りの3分の2はお断りしている。

私がお断りするタイプの依頼は、「借金で苦しんでいる人を紹介する」という主旨の依頼だ。
私自身に、借金で苦しんでいた時のことを語って欲しい、という依頼もあるし、今借金で苦しんでいる人の生活を取材したいので、誰か紹介して欲しい、という場合もある。
 ニュース番組の特集や、週末の昼間にひっそり放送されているドキュメンタリー番組などで、多重債務者やヤミ金被害者などが取り上げられているのは、時々目にする機会があるが、これらのほとんどは、まさに「借金で苦しんでいる人を紹介する」だけに留まっている。
パチンコに興じては借金を繰り返す人や、携帯にガンガン取り立て電話がかかってきて、しどろもどろで応対する人、家のポストから溢れんばかりの督促状やヤミ金のDMを見て呆然としている人など、のん気にテレビの取材など受けていないで、一刻も早く弁護士さんに相談に行きなさい、と言いたくなるような人ばかりが登場し、何の打開策も図られないまま、番組は終わってしまう。
そういう人が、一念発起して生活を見直し、債務整理をして、無事やり直す、というところまで紹介してくれるのなら、まだわかるが、ただ借金に苦しんでいる人を紹介して、一体何になるのか、と思う。
「人の不幸は蜜の味」などというが、借金の取立てに追い詰められている人の姿を見ることで、反面教師的に自分の幸福を実感できるので、視聴者のウケは良いのかもしれない。
そんな野次馬根性だけで債務問題を扱おうとするマスコミ関係者の多さには、本当に呆れてしまう。

私はダイヤモンドZAI誌の一件(2001年7月の日記参照)以来、企画意図が明確になっていない取材依頼には応じないことにしている。私の過去の借金生活を、面白おかしく掲載されるだけなんていうことは、二度としてもらいたくない。
ところが、最初に来る依頼のほとんどは、企画意図が明記されていないし、中には取材の依頼なのか、原稿執筆の依頼なのかすらわからないような依頼も数多く来る。
私が携わっていた媒体は、特定業界の経営者向けの情報誌だったので、取材を依頼する相手も、企業のトップや官僚などが多かった。
それが特殊だったのかもしれないが、取材の依頼は「謹啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」からはじまる文書で、掲載誌名、企画内容、インタビュー事項の概要などを明記して依頼するのが常識だった。
しかし、私のところにくる依頼のほとんどは、メールだから「謹啓 時下ますます・・・」は必要ないと思うが、どんな媒体にどんな主旨で何を掲載したいのか、ということも書かれていない場合が多い。
借金の問題をどのような視点で扱い、私にどのようなコメントを望んでいるのかということは、最低限のマナーとして明示してもらいたいし、私も不本意な情報が流れてしまうのはイヤなので、その点をきちんと確かめた上で、協力できる物には協力したいと思っている。
それなのに、「企画意図を明記してください。借金に苦しむ人を野次馬根性で紹介するような企画ならお断りします」とお返事をすると、いきなり逆ギレしてくる自称フリーライターもいる。
こういう人は、「マスコミの取材」と言えば、シッポを振って飛びついてくる、とタカを括っているのかもしれない。同じライター経験者としては、ちょっとガッカリしてしまう。

私の経験上から言っても、マスコミ関係者は、「自分が世論を作っている」という自負を持って仕事をしている人が多い。
その自負が、責任感になっている場合は良いのだが、中には「オレが世論だ」「オレの意志で世論は動く」というような勘違いをしてしまっている人も少なくない。自分の見方、考え方こそが絶対で、自分と違う考え方の人は「間違っている」と、排除してしまう。

そのような人たちは、借金で苦しんでいる人の生活を見せることは、社会問題に鋭く切り込んでいる、安易に借金をしようとする人の心に一石を投じられる、と思い込んでいるから、私が「そんな野次馬根性で債務問題を扱わないでください」などと言うと、ひどくプライドが傷つけられるらしい。

つい最近も、あるテレビ番組制作会社の人から、「借金で自宅を差押えられた女性を紹介して欲しい」という依頼があった。
その人とのやり取りの中で、借金に苦しむ人を紹介するだけでなく、債務整理についての正しい情報を流して欲しい、と言ってみたのだが、その人は「債務整理についての情報をテレビで流すのは、借金に対する視聴者の意識にとって良くない」と言ってきた。
恐らくこの人にとっては、債務整理は借金をした人の「逃げ道」であって、債務整理を紹介することによって、安易な借金をする人が増える、と思っているのかもしれない。
それもひとつの考え方として、否定はしないが、サラ金のCMをガンガン流している一方で、借りた側の権利である債務整理について一向に正しい紹介がされていない現状は、テレビという媒体のスポンサー至上主義、偏向ぶりが指摘されても止むを得ないのではないかと思う。

私がマスコミに望むのは、多重債務者の生活の実態を紹介することではない。
借金をしないで済む生活はどうすればできるのか、それでも万が一多重債務に陥ってしまったら、どんな解決手段があるのか、ということを紹介して欲しい。
「借金地獄に苦しむ」ドキュメンタリーではなく、「借金生活から脱却する」ドキュメンタリーや記事を作って欲しい。
私もそのための協力なら惜しまない。