2004年10月19日火曜日

多重債務は浪費家だけの問題ではない

このようなサイトを運営していると、毎日たくさんのメールをいただく。
借金のご相談は、メールではなく掲示板でお願いしているので、メールをいただくのは、ご自身が借金とは無縁の方が結構多い。
そのような方は、なんとなく借金問題に興味があるとか、直接自分は関わっていないけれど、身内や知人に借金問題を抱えている方がいる、という理由でこのサイトを読んでいる方だ。こういう人たちは、「どうして返せないような借金をするんだろう」という、疑問の答えを求めて私にメールをしてくる。

以前もこの日記に書いたことだが、初めから「返せない」とわかっている借金をする人はほとんどいない。「返せるはず」だったのが、病気やリストラ、もしくはもともとの見通しの誤りなどが理由で「返せない」物になった時、ただの借金が「借金問題」となり、悩みの種になる。返せなくなってしまった借金を、別の借金で穴埋めし始めると、借金問題は「多重債務問題」となり、悩みはより深く、借金はより多額に膨らんでいく。
最初のきっかけは、車のローンを組んだり、クレジットカードでパソコンを買ったりしただけだったのかもしれない。その返済が、色々な理由でできなくなった時、他から借金をして返済してしまう。その借金を返すために、更に別のところから借金をする。やがて収入の大半が返済に消え、生活もままならなくなって、生活費のために更に貸してくれる所を探す。
実際に多重債務を経験した人なら、この悪循環が多重債務のメカニズムだということを、身を持って体験して知っているわけだが、上記のような、借金と無縁の人にとっては、「多重債務」というのは、先のことを何も考えずに、浪費の限りを尽くす人のだけの問題だと思っている人が少なくない。要するに、「借金をする人=お金にだらしない人」という発想だ。
確かに、浪費の限りを尽くして多重債務者となった人も、中にはいるだろうが、私が自身の借金の経緯を公開しているにもかかわらず、私に対しても「なぜ債務整理しなくてはならなくなるまで借金をし続けたのか」「途中でヤバイと思わなかったのか」と質問されることがある。私はもともとお金にだらしない人間で、それが債務整理をきっかけに生まれ変わったのだ、と思われることもある。
もちろん「ヤバイ」と思ったからこそ、借金を返すために必死で借金できる所を探し、爪に火を灯すような生活で、1日1日を息も絶え絶えにやりすごしていたわけで、そういう意味では、借金を抱えていた頃は、今よりずっとお金にシビアだったのだが、「借金=浪費」という固定観念があると、この感覚はなかなか理解してもらえない。
多重債務者になる前に、債務整理についての知識があれば、もっと早くに借金を整理して、普通の生活をしていたと思うが、債務整理の知識がないと、返済すること以外に解決手段はないし、そのために他から借金をしてでも返済をし続ける、という悪循環から、永遠に抜け出せない。

「なぜ借金をするのか」という問いかけをしてくる人は、「こういう理由で借金が膨らむ」という明確な返答を得ることによって、自分がその「借金の理由」に近付きさえしなければ、多重債務とは一生無縁でいられる、という安心感を得たいのではないか、と感じる。
たが、残念ながら「こういう理由で借金が膨らむ」とか「こういう人が多重債務者になる」という明確な答えはない。
絶対に多重債務にならないためには、「何があっても絶対に借金をしないこと」しかない。ここでいう「借金」とは、サラ金から現金を借りることだけではなく、車のローンや住宅ローンも含めた「借金」だ。すべてにおいて「100%現金払い」を貫かない限り、多重債務者になる可能性は0%にはならない。
それでも、住宅ローンを組んでしまった人が多重債務者にならないためには、「もしローンが払えなくなっても、絶対に借金で穴埋めしない」ことだろう。「返せない」という現状を自分ひとりで抱え込んで何とかしようとするのではなく、大げさに言えば、「今月のローンが払えないよー」と、周りの人に大声でふれ回るぐらいの気持ちで、見栄も恥も捨てて援助を求めるしかないと思う。

恥をしのんで、家族に援助を求められるかどうかということは、多重債務者になるかどうかの大きな分かれ道だと思う。
多くの多重債務者は、金銭的なピンチを誰にも相談できず、自分だけで何とかしようと思った人たちだ。その時、親に頭を下げて、5万円借りることができていれば凌げたはずのピンチが、サラ金から高利で借りて凌いでしまったことによって、債務はあっという間に膨らみ始める。
多重債務者になって、親から5万円借りても「焼け石に水」にしかならなくなってから親に相談しても、その時はもうどうしようもない。
「多重債務者になるのは育った家庭環境に問題があるからだ」、などという話も聞くが、むしろ親が無借金で堅実に生活している人であるがゆえに、借金に対する罪悪感が強くなり、住宅ローンが払えなくなっても親に相談もできず、債務を膨らませてしまうケースも多いのではないだろうか。

多くの多重債務問題は、「返せない借金」や「浪費」から起こるのではなく、「返せるはずの借金が何かのきっかけで返せなくなってしまった」ことから起こっている。
返せなくなるきっかけは、病気やリストラ、最近はクレジットカードのスキミングや、キャッシュカードを盗まれて預金をまるごと持っていかれた、という事件もあるから、そういうきっかけもあるかもしれない。
とにかく、何かのきっかけで返せなくなってしまった借金を、一度でも別の借金で穴埋めしてしまえば、あっという間に多重債務者になってしまう可能性が非常に高いのだ。
だから、今「多重債務なんて自分には無縁だ」と思っている人も、このサイトを他人事だと思うのではなく、「明日はわが身」だと思って読んで欲しいと思う。住宅ローンを払っている人は、もし自分が急にリストラされたり、長期入院が必要な病気になったりしても、ちゃんと払い続けて行けるのかどうか、試算してみて欲しい。