2006年6月16日金曜日

多重債務問題シンポジウムレポート(1)

2006年6月15日に行われた日弁連主催の多重債務問題シンポジウムの参加レポートの第1回です。

約2時間半のプログラムで、内容は大きく分けると下記の4点です。

1.元多重債務者などによる体験報告
2.司法・立法・政府の金利問題に対する考え方の確認と動向
3.日弁連や関係団体の多重債務問題・金利問題に対する取り組みの報告
4.経済学的観点から見た金利問題

体験報告では、5人のパネラーが順番にご自身の体験を語ってくれました。

・実際は700万円以上の過払いがあったのに、サラ金の取立てに追われてホームレスになり、病気になってしまった人

・本人の在・不在にかかわらず、職場にも家族にもサラ金から執拗な取り立てが続き、家庭崩壊の危機に直面した人

・仕事だと思って淡々と取り立て業務を行っていたものの、顧客の自殺に遭遇したことから、自分の仕事に疑問を感じ、結局退職した元サラ金支店長

・商売の運転資金の借り入れをきっかけに自転車操業に陥り、ついにはヤミ金にも多額の借金をしてしまったものの、利息制限法のことも過払いのことも何も知らないまま、長年に渡り多額の返済を続けていた人

・母親がサラ金に返済できなくなったことを苦にして自殺してしまったが、取引履歴を開示してみると、すでに過払いが発生していることがわかり、やり切れない思いをした人

こうして文字にしてしまうと「聞いたことのあるような話」で済んでしまうかもしれません。
私も正直なところ「多重債務体験は自分のサイトの掲示板でも、他のサイトや新聞でも十分聞いているから、いまさら体験談なんか聞いても・・・」と思っていました。
しかし、実際にご本人の口から体験を聞くのは、新聞やネットで見聞きしていたのとは比べ物にならないぐらいのインパクトがありました。
私は債権者を加害者よばわりしてパッシングするのは嫌いなのですが、このような体験者の人たちが涙ぐみながら「サラ金は許せません!」「ヤミ金が憎いです!」などと叫ぶのを目の当たりにすると、さすがの私も「ウンウン、絶対許せない說」と怒りが込み上げてきました。

時々私が槍玉に挙げることがある、民商系の多重債務者救済団体のほとんどは、サラ金を徹底的に悪人呼ばわりし、債務者は違法金利であることも知らされずに貸し付けられ、多額の返済を強制されてきた被害者だという主張をしています。
あまりにも極端過ぎて、全然ついていけない論法だと思っていたのですが、毎日毎日このような体験をしている多重債務者の話を生で聞き続けていれば、サラ金に対する怒りがどんどん募るのは当然のことかもしれません。

昨今の報道やネットの普及によって、数年前に比べれば債務整理のこともグレーゾーン金利のことも広く一般にも知られるようになって来ましたが、それでもまだまだ違法金利であることも知らずに、必死になって利息を払い続けている人や、払い切れなくなって自殺までしてしまう人も大勢います。
だから、サラ金の金利は違法だということは、もっともっと広く世間に周知しなくてはなりません。

しかし、だからと言って、

サラ金=加害者/債務者=被害者

という構図ばかりを強調するのも得策だとは思いません。

現実に多重債務者になったことがある人か、ごく身近にいた経験のある人でないとこの構図は理解できないと思います。
多重債務者とは無縁の人が「サラ金は加害者だ」と聞いても、単に自分のだらしなさから負った借金を貸し手のせいにしているだけ、と捕らえる人が大半でしょう。

返しても返してもまったく元金が減らない苦しみとか、執拗な取立てに追い詰められた時の精神状態などは、体験したものでないとなかなかわからないと思います。
私が今回のシンポジウムでの体験談に強いインパクトを感じたのも、彼らの体験には及ばないものの、同じような体験を持っているからこそだったのかもしれません。

このような"被害体験"を外に向かって語ることに意味がないとは思いませんが、こんな"被害者"を出すから、サラ金のやっていることはダメなんだ、サラ金は「加害者」なんだ、という論法では、単なる「感情論」で終わってしまう危険性があります。

淡々と「グレーゾン金利は違法なんだ」「サラ金の高金利では、一般家庭の家計では返済仕切れないのだ」ということを、論理的に説明する方が、様々な立場の人々の理解と同意を得やすいのではないかと思っています。

昨日の報告にも書いたように、今回のシンポジウムには、民間の多重債務者救済団体の人が多く参加していたようです。
元債務者たちの被害報告の時は、会場は立ち見も出るほど満員で、うなずきながら真剣に話を聞いている人がほとんどだったのですが、最後の方の経済学の先生の講演の時には、空席も目立つようになって、アクビをしている人もたくさんいました。
"債務者救済"というボランティア精神は素晴らしいと思いますが、学者さんのような客観的な立場からの話に耳を傾けないのは、いただけません。
感情論だけで、サラ金に敵意をむき出しにするのではなく、こんな問題には関わりも関心もないような人の立場や意見にも耳を傾け、そのような人たちに同調してもらえるような論法を身に付けて欲しいと感じました。

次回へ続く