2006年6月18日日曜日

多重債務問題シンポジウムレポート(2)

2006年6月15日に行われた日弁連主催の多重債務問題シンポジウムの参加レポートの第2回です。第1回はこちら

元債務者たちの報告の後、来賓の国会議員さんたちからの挨拶がありました。
テレビの討論番組などを見ていてもいつも思うのですが、国会議員さんというのは饒舌です。長い割には特筆すべきような話はなく、金利問題を日銀総裁の村上ファンド投資問題に無理やりこじつけてアピールするような野党議員もいて、ちょっとウンザリしました。
金利問題解決に、国会議員さんの力が欠かせないのはわかりますが、おかげで、後のプログラムが押してしまい、じっくり聞きたかった経済学の先生や宇都宮弁護士の話が大幅に割愛されてしまったのはとても残念です。

その後、金利問題の論点整理と、今の司法・立法・政府の動向の報告が3人の弁護士さんからありました。

日弁連が求めている法改正は以下の4点です。

●出資法の上限金利(29.2%)を利息制限法の制限金利(15~20%)に引き下げる
●貸金業法43条「みなし弁済規定」の撤廃
●日掛け金融等の特例金利の廃止
●脱法的保証料徴求の禁止

アイフルの行政処分をきっかけに、利息制限法と出資法の間にある「グレーゾーン金利」の存在は報道などによって、広く知られるようになりました。
この「グレーゾーン」を撤廃し、金利を一本化することは、ほぼ国会内でもコンセンサスが得られているようです。
問題は、

利率を何パーセントにするのか

というところにあります。

もちろん、日弁連は「出資法を利息制限法にあわせるべき」という見解で、利息制限法そのものも、これだけ低金利の時代になった今、それに見合った引き下げを検討する余地すらある、と考えています。

しかし、以前の記事にも書いたとおり、「利息制限法を出資法にあわせるべき」「両者の間を取って、22~25%ぐらいで決着してはどうか」と考えている人たちも少なくありません。
詳しくは後で書きますが、「そもそも金利の上限を定めることが、規制緩和の流れに逆行している。金利は経済の需給バランスの中で自然に決まるものだ」という主張もあります。

しかし、金利は最高でも利息制限法の制限金利ぐらいまでが妥当なのです。
それ以上の金利では、家計は破綻します。
このシンポジウムに参加して、「収穫だった」と感じたことがいくつかあったのですが、そのひとつが、以下に紹介する数字のデータを教えてもらえたことです。
このデータが「金利は利息制限法の範囲内が妥当」と主張する根拠のひとつになります。

総務省の「全国消費実態調査」によると、家計の平均黒字額(収入から生活費等の支出を引いて手元に残る金額)は、

●年収250~300万円の世帯---19,728円
●年収350~400万円の世帯---26,180円

もちろん、地域や家族構成による差もありますし、節約・倹約に努めている家庭もあれば、湯水のように浪費している家庭もあるでしょうから、いちがいには言えませんが、借金の返済に回せるのは、この「黒字額」の範囲内ということになります。
黒字額を超えた返済をするためには、別の借金をしなくてはなりません。

年収300万円の家庭が、100万円の借金を作ったとします。
利息制限法の制限内であれば、年利は15%ですので、借入1ヵ月後に発生する金利は12,500円です。
従って、上記黒字額の19,728円を返済に回した場合、元金も7,228円返済できることになります。
この調子で毎月19,728円づつ返済すれば、約8年で完済できます。

一方、この借金に出資法上限の29.2%の年利がついている場合は、借入1ヶ月後には24,333円の金利が発生してしまいますので、毎月19,728円の返済では、金利すら払い切れず、利息によって債務額が増えていく一方だということになります。
不足分を補うために、別の借入をしてしまえば、翌月からはその分の金利負担も増えていきますから、このようないわゆる「自転車操業」を始めてしまうと、借金はあっという間に膨れ上がってしまいます。

これが、長年サラ金の借金を抱えている人の「返しても返しても元本が減らない」仕組みです。

よく、「借りたものは、少しづつでも、何年掛かってでも返済すべきではないか」と言う人がいます。
確かにその通りなのですが、それは利息がつかない場合の話であって、高利の借金を負ってしまうと「少しづつ」返しているだけでは「何年かかっても返済できない」ということなのです。

「金利を下げても借りるヤツは借りるのだから、金利を下げても多重債務問題は解決しない」と言う人もいます。
そういう側面も否定はしませんが、上記のシミュレーションの場合、利息制限法以内の利率なら、家計の黒字額分をきちんと返して行けば、新たな借金をすることなく完済が可能です。
同じ年収で、毎月同じ金額を返済していても、利息が高いというだけで、元本を減らすことすらできず、新たな借入をせざるを得ない人も少なからずいるのです。
金利の引き下げによって、少なくともこのような人を多重債務者にせずに済むのです。

全情連(主にサラ金業者が加盟している信用情報機関)の統計によれば、

●サラ金の顧客数--約1586万人
●うち借入件数5件以上(債務額205~292万円)--約229万人
●延滞情報または債務整理情報のある顧客数--約268万人

だそうです。

サラ金に借金がある人のうち約14.5%が、5社以上の会社から借りていることになります。
このうちの何割かは、金利が低ければ2件目、3件目の借入を起こさずに済んでいるはずです。

私自身も含め、多くの多重債務者が多重債務者になった理由は「返済できるかどうか考えもせずに借りられるだけ借りて、浪費し尽くした」からではありません。
「常に返済のことで頭がいっぱいで、返済資金を得るために別の借金をする、収入を全部返済に回し、今日の食事に困って新たな借金をする」ということを繰り返して多重債務者になった人がほとんどです。

返済のための新たな借金の必要をなくすこと

これこそが、多重債務者を減らすために必要なことです。
そのために、金利の引下げが、もっとも有効な手段のひとつだと言えると思います。

次回に続く