2006年9月22日金曜日

サラ金の団体生命保険が廃止の方向へ

最近になって、金利問題とあわせて、サラ金と生保が結んでいる「消費者信用団体生命保険」の問題が急浮上してきました。

「消費者信用団体生命保険」(団信)とは、サラ金が自ら保険料を負担して借り手に生命保険をかけ、万が一借り手が死亡した場合、サラ金は保険料で債権を回収するというものです。

この保険に対しては、マスコミも、このことを知った個人ブログも、概ね批判的な論調が多く、「サラ金は命を担保にしてお金を貸している」とか、「最終的には保険金で回収できるので、借り手を自殺に追い込むような厳しい取立てにつながっている」などと言われています。

しかし、このような論調はむしろサラ金側の思惑に乗せられているのではないかと感じています。

私は突然この団信が槍玉に挙げられたことに、かなり違和感を感じています。
このような保険は以前からありましたし、住宅ローンを組んだ時などにも同じような生命保険がかけられます。
金利引き下げの方向で話が進んでいる中、団信の制度が厳しく批判される形で、突然浮上してきたことに、深読みしすぎかもしれませんが、まったく別の思惑の存在を感じるのです。

世間の強い批判を受けて、サラ金はこの団信を廃止する方針を固めたようです。

ひとつニュース記事を引用してみます。
<プロミス>10月にも保険利用打ち切る方針 他社追随も
消費者金融が債権回収のために借り手に生命保険を掛けている問題で、消費者金融大手のプロミスは20日、10月にも保険の利用を打ち切る方針を固めた。借り手が知らないうちに加入し、厳しい取り立てにつながっているなどとして、「命を担保」にしているとの批判が高まっていた。プロミス幹部は「遺族の負担軽減のためにやっているのに、誤ったイメージを与えられ、継続する意義がなくなった」と述べ、他の消費者金融も追随する可能性がある。
ただ、保険を打ち切れば、借り手の死亡によって債務を相続する遺族からの回収が問題となる恐れがある。
問題となっている保険は、消費者金融と生保が結んでいる「消費者信用団体生命保険」。消費者金融は保険料を支払う代わりに、借り手が死亡した場合は保険金を受け取る。年間の保険料が、受け取る保険金より多いが、プロミスは「自社の債権の保全と遺族に債務を引き継ぐことを防ぐ顧客サービス」として利用してきた。
しかし、多重債務者問題にからみ消費者金融の保険利用への批判が高まる中で、「借り手の遺族に対する利点が理解されず、消費者金融がこの保険で利益を上げているような誤解が広がった」ことから、保険の利用を継続するよりも打ち切るほうが、経営への影響が抑えられると判断した。契約している保険会社との協議がまとまり次第、最終決定する。
(毎日新聞) - 9月21日3時7分
私がサラ金の言うことを支持することはほとんどありませんが、この件に関してはプロミスの言い分はもっともだと思っています。

この件で問題があるとしたら、「生命保険をかけることを、借り手本人にきちんと伝えていなかった」という点です。

しかし、団信のおかげで、借り手が死亡した場合に借金が遺族に引き継がれずに済むというのは事実です。

利息制限法で計算し直せばすでに過払いになっている場合でも、その事実を遺族に伝えたり、過払い金を遺族に返還せずに、契約時の利率のまま残債をちゃっかり保険料として受け取っているので、この点を問題視する声もありますが、遺族にとって"突然降って沸いた借金返済義務"と"突然返ってきた過払い金"ではどちらが負担となるかは明らかです。

借り手本人が生存していれば、配偶者や子供であっても、借金の返済を肩代わりする義務は連帯保証人にならない限りは一切ありません。
しかし、借り手本人が死亡した瞬間、その借金は「遺産」となって、相続人に相続されます。
「遺産」というと、預金や土地建物など、プラスの資産だけだと勘違いしている人もいるかもしれませんが、借金もマイナスの「資産」として、プラスの資産と同じく相続されます。

私のサイトの掲示板にも、「家族に内緒で借金を整理したい」という人が多いのですが、突然不慮の事故で亡くなった人が、実は家族に内緒で複数のサラ金の借金を抱えていた、ということはあり得る話です。
団信があればサラ金は保険金で債権を回収しますが、団信が廃止になれば、サラ金は遺族に取り立てに来ます。
すでに相続人=借り手本人なのです。
遺族にとっては、大切な家族を無くした上に、突如サラ金の借金を負わされるハメになるのです。

亡くなった本人が残した資産が借金などの「マイナスの資産」だけなら、相続人が「相続放棄」をすることで、借金を引き継ぐ義務はなくなりますが、借金だけでなく、家など「プラスの資産」も残した場合は、相続放棄をすると家の相続の権利もなくなってしまいます。
都合良くマイナスの資産の相続だけ放棄する、というわけには行きません。

ですから、プロミスが言っているように、団信の目的が「遺族に債務を引き継ぐことを防ぐ顧客サービス」だというのは決して嘘ではないのです。
きちんと借り手にその意義を説明した上で、続けるメリットは、貸し手借り手の双方にあると感じています。

しかし、今回の批判を受けて、サラ金はあっさりとこの団信を廃止する方向に動き始めました。
それが逆に疑わしいのです。

本当はサラ金の方が、この団信制度を止めたかったのではないか。
そのために、わざとネガティブな情報を流したのではないか。

そんな気すらしてきます。

もう一度、上記の記事をよく読んでみると、
年間の保険料が、受け取る保険金より多いが、
という一文があります。
仮に本当に厳しい取立てをして、借り手を何人か自殺に追い込むようなことをしていたとしても、収支はマイナスなのです。
実はサラ金は、高い保険料を負担して、死亡した借り手が残した債権を保全するよりも、保険料負担をやめて、借り手本人が亡くなった場合は「遺族にガンガン取立てをかけた方が得」という判断をした、とも取れるのです。

一方で、団信を止めることによって、明らかな「貸し倒れリスク」も生まれます。
身寄りのない天涯孤独の借り手が死亡した場合は、相続人がいませんから、貸し倒れとして処理するしかありません。
相続人が相続放棄をしてしまったり、相続しても返済能力がなくて自己破産などをした場合も、サラ金は貸し倒れ処理をすることになります。

このような「団信を止めたことによる貸し倒れリスクの増加」は、今の金利引下げに向けた法改正の動きにブレーキをかけることになりかねません。
自民党がまとめた法案のとおり、特例金利の見直しを行うことになった場合、このような貸し倒れリスクの増加は、特例金利の継続や上限金利の引き上げなどを主張するための「武器」にもなり得るものです。

余りにも絶妙のタイミングで、サラ金が団信を廃止せざるを得ないようなニュースが出たのは、実は金利引下げを何とか阻止しようとする、貸金業界の画策の一環のようにも思えてきます。
団信を廃止しても、サラ金は保険料負担分の赤字が減少するので、実際はたいしたダメージにはならないでしょう。
本当に困るのは、むしろ借金を相続して取立てを受けることになる遺族の方ではないかと心配しています。