2007年12月30日日曜日

自殺する勇気、生きる勇気

このブログ内に、1年半以上前に書いた記事にも関わらず、毎日必ず一定数のアクセスがある記事があります。

パチンコ・パチスロ依存を考える

それだけ皆さんの関心が高いということでしょうし、借金問題とパチンコ・パチスロ依存の問題は深い関係がありますから、今後も機会があれば考察して行こうと思っています。

もうひとつ、借金問題と深い関わりがある問題があります。
それは「自殺問題」です。

サイトを開設して7年余り経ちますが、これまで私は自殺問題に直接言及したことはありません。
それは、「人の命」について語る責任の重さを背負う自信がないからです。

「たかが借金で死ぬ必要はない」と言うのは簡単ですし、実際、誰かを励ますために使ったこともある言葉です。
でも、私自身も多重債務で苦しんでいる最中には、漠然と「死ぬ」ということを考えたこともあり、その時誰かに「たかが借金で・・・」と励ましてもらったとしても、「この苦しみがわからないから軽々しく『たかが』なんて言うんでしょ」としか思わなかったかもしれません。
最近、貧困問題に関心を持つようになり、本当に「たかが」とは言えない借金問題もあることに改めて気付くと、ますます「借金ぐらいで死ぬな」とは言いにくい気持ちになります。

それでも、やはり、一度は言っておかなくてはならないのだと思います。

死ななくても、借金問題は必ず解決します。

私がこれまで自殺問題に触れなかったのには、もうひとつ理由があります。
私の個人的な体験のせいなのですが、これまで人に話したことはほとんどありません。
その体験を、少し書いてみようかと思います。
自殺願望者や、自殺で家族や親しい人を亡くした人の話はネット上に少なからずあると思いますが、赤の他人の自殺に影響を受ける人もいる、という話です。

私が5歳の時、父がある新築マンションを購入し、両親と私の家族3人はそれまでの借家からそのマンションに引っ越しました。
今思うと、父はその時まだ30歳でした。その若さで新築の4LDKのマンションを買ったのですから、父にとってはとても大きな決断だったと思います。折り合いの良くなかった父親(私の祖父)に、頭金を借りるために何度も頭を下げに通った、という話はずっと後になって母から聞きました。
そのマンションから、私は幼稚園も小学校も私立に通っていたので、一人っ子とはいえ、家計は結構たいへんだったと思います。

我が家は7階建てのマンションの1階で、南側には、マンションにしては広い庭がありました。北側が玄関で、玄関を開けると、よくあるマンションの廊下です。5歳の私の目線からでも外が見えるほどの低い手擦りの向こうは、駐車場になっていました。

そのマンションに住み始めて3年目、私は小学校2年生でした。
ある日の夕方のことです。家には母と私のふたりでした。私は自分の部屋で宿題でもやっていたのかもしれません。
突然、ドスーン!!という鈍くて大きな音が鳴り響き、それまで体験したことのない、地面のずっと下から突き上げてくるようなものすごい振動が起こりました。
椅子に座っていた小さな私の体は椅子から跳ね上がり、私はそれまでの7年ほどの人生の中で最大の恐怖を感じました。
学校で習い始めたばかりの、戦争や原爆のことが頭をよぎりました。
母も驚いて、私の部屋に駆け込んで来ました。
でも、音も振動もそれ一回切りで、すぐに母も私も落ち着いたので、「何だろうね」とふたりで外の様子を見に行こうと、玄関を開けました。

直接見たのかどうかは覚えていません。
思い出せない「空白の一瞬」の後、母が「ダメ」と言って私を家の中に押し込み、玄関のドアを閉めてしまいました。
その後も記憶は断片的で、救急車なのかパトカーなのかわからないサイレンの音が鳴り響いていたり、大勢の人が集まってザワザワしている感じがしたりしていました。

「何があったのか」を母から説明してもらったのも、その日のうちだったのか、もっと何日も経ってからだったのかもよく覚えていません。
とにかく、あの音と振動は、マンションの屋上から我が家の玄関の真ん前の駐車場に人が落ちてきたからだということ、落ちてきたのはミドリちゃん(仮名)のお母さんで、自分の意志で飛び降りたらしい、ということを聞きました。

ミドリちゃんは、我が家のマンションの脇にある廃屋かと思うほど古くて小さな一軒家に両親と妹と住んでいた私と同い年の女の子でした。
幼稚園には行っていなくて、小学校も別でしたから、特別親しくはありませんでしたが、公園に行って偶然会えば一緒に何度か遊んでいました。
でも、ミドリちゃんの洋服はいつも汚れていて、何度か見かけたことがあるミドリちゃんのお母さんも、いつも髪の毛がボサボサで顔色が良くありませんでした。
詳しい事情はよくわかりませんが、ミドリちゃんの家は色々な問題を抱えていたのだと思います。

いずれにしても、知っている子のお母さんが自殺した、という事実は幼い私にとってはかなり大きなショックでした。
2~3日後には、我が家の真ん前に祭壇が設けられ、神主さんが我が家に向かってお祓いをし、数ヶ月間は我が家の真ん前に献花台がありました。
毎朝学校に行くために玄関を開ければ、洗い流した大量の血の跡がくっきりと目に飛び込んできます。その跡はなかなか消えませんでした。
毎朝、そこで起こったことを自分の目で確認せざるを得ない日々の中で、私はあの大きな音や振動や、生前もボサボサの髪に青白い顔をして怖い感じがしていたミドリちゃんのお母さんが、もっと怖い姿になって襲ってくる夢を毎晩のように見るようになり、不眠症のようになってしまいました。学校も休みがちになりました。

両親もそんな私を心配し、自分たちもいい気持ちはしないので、買って4年の新築マンションを手放してよそに引っ越すことになりました。
やはり自殺のあったマンション、しかも真ん前の部屋ということで、とんでもなく安い価格でしか売れず、かなりの金額のローンが残ってしまったことも、ずっと後で母から聞きいた話です。
父はマンションを買ったことを今でも後悔していて、その後はずっと賃貸暮らしです。「家なんて買うもんじゃない」と口癖のように言っています。

住む場所も学校も変わって、私は怖い夢を見ることもなくなり、夜も眠れるようになりました。ミドリちゃんやお母さんのことも時々は考えましたが、生々しい感じは消えて行きました。

私は中高一貫教育の私立中学に進学しました。
私立進学には私より母が熱心で、5年生の頃から日曜日も塾に行かされて受験をした中学でした。
その学校は、中学の校舎と高校の校舎が少し離れてL字型に立っていて、教室からお互いの校舎全体が見えるような作りになっていました。
中学の校舎の方が新しくて、職員室や音楽室などの特別教室も中学の校舎側にあったので、休み時間は校庭を横切って大勢の先生や生徒が移動するのですが、もちろん授業中の校庭は体育の授業をやっていない限りは誰もいません。

中1の夏休み明けの頃だったと思います。1階の教室の窓際の席で授業を受けていた私が誰もいないはずの校庭にふと目をやると、高校の校舎から制服を着た女の子がこっちに向かって走ってくるのが見えました。
「どうしたのかな?」と思った瞬間、ドスーン!!という鈍くて大きな音と、地面の下から突き上げてくるようなものすごい振動を感じました。

全身から血の気が引きました。

「この感じ!」と思った瞬間、女性の断末魔のような恐怖に満ちた悲鳴が学校中に響き渡りました。
教室中が騒然となり、男の子たちが「何だ、何だ」と窓に駆け寄って来る間に私は悟りました。
「飛び降り自殺だよ・・・」
私はそう言って、教室をより騒然とさせてしまいましたが、自分は全身がブルブル震えて席に座っているのもやっとでした。
校庭では、中学の校舎の屋上でウロウロしている女の子を見つけ、職員室に知らせに行こうとこちらに走ってくる最中に、飛び降りる姿をまともに目撃してしまった高校生が座り込んで悲鳴を上げ続けていました。

飛び降りたのは、高校3年生の女の子でした。校庭から目撃してしまったのは、同じクラスの仲良しの子だったそうで、彼女のショックも計り知れません。
ふたりとも直接知っている先輩ではありませんでしたが、同じ学校の生徒が校舎から飛び降り自殺したことはやはりショックな出来事でした。
しかも、ミドリちゃんのお母さんの時と同じ音と振動をもう一度体験してしまったことで、ミドリちゃんのお母さんのことまで、生々しい実感を持って蘇ってきてしまいました。

最近は学校でこのような事件があると、「子供たちの心のケア」を考えてカウンセラーを呼んだりしているようですが、当時は何のケアもなく、朝礼で校長先生が「高3の○○さんが亡くなりました」と言っただけで、詳しい説明もなく、全員での黙祷もなく、何事も無かったかのように普通に授業が行われました。
説明が無かった分、その事件に関しての様々な噂や憶測はなかなか学校の中から消えず、私も「なぜすぐに飛び降り自殺だとわかったのか」と、何度も質問されたり、オカルト的噂話を流されたりしました。

おかげで、再び怖い夢と不眠に悩まされるようになってしまいました。
今度はミドリちゃんのお母さんが高校の制服を着て現れたり、校庭から聞こえた悲鳴も入ってくるようになりました。
せっかく塾に通って、受験をして入った中学なのに、結局これがきっかけで学校を休みがちになってしまいました。

夢は半年程度でほとんど見なくなりましたが、夜眠れない状態は卒業まで続きました。
明るくなると眠れるので、中3の頃はほとんど学校には行かず、夕方起きて、夜は塾に行き、深夜ラジオを聴きながら勉強をして、明るくなってから眠る、という生活をしていました。
そして、エスカレーターで進める高校には進学せず、別の高校を受験して進学しました。

高校に進学して以降は、不眠にも怖い夢にも悩まされることはなくなりましたが、今でもテレビで飛び降り自殺のニュースを見た日の夜には、夢にミドリちゃんのお母さんが現れることも時々あります。

そういうわけで、普段意識することはありませんが、私の心の奥の方には、自殺者に対する恨めしい気持ちがあると思います。
私には小・中学校時代の「学校での楽しい思い出」はほとんどありません。
毎日学校に通って、友達と楽しく遊ぶ、という当たり前のことが少ししかできませんでした。
小中学生時代の思い出といえば「怖くて夜眠れなかった」ことだけです。

これまで自殺について言及してこなかったのは、無意識のうちに自殺者や自殺願望者を非難する論調になっしまうことが怖かったからだと思います。

ミドリちゃんのお母さんも高校生の先輩も、まさか自分の自殺のせいで、ほとんど面識のない私がこんな目にあうことなど想像もしていなかったでしょう。
それぞれに心に痛みや悲しみを抱え、抱えきれなくなって死を選んだのだと思います。

でも、死んでもその痛みや悲しみは消えてなくなることはありません。
その痛みや悲しみは、家族や恋人や友達に伝染し、私のような見ず知らずの赤の他人の心にまで浸透してしまうのです。

そんなにも大勢の人の心を蝕むようなことをする勇気があるなら、死なずに借金と向き合って欲しいと思います。
お金には心の痛みも悲しみも伝わりません。
でも、人には伝わってしまうのです。
伝えようと思わなくても、たくさんの人の心の中に飛び散って行くのです。

今、死を考えている人は、近くの公園に行って、遊んでいる子供たちの顔を見て来てください。
その子たちの心に、あなたの心の痛みを分け与えたいと思いますか?

自殺する勇気のある人なら、生き続ける勇気を持つことも必ずできるはずです。
どうか、見知らぬ子供たちの無邪気な笑顔を守ってあげてください。

2007年12月24日月曜日

改正貸金業法が本格施行

今月19日から、去年国会で大モメした末に成立した改正貸金業法が本格施行されました。

主に罰則強化の部分がすでに先行して施行されていた改正貸金業法ですが、19日からの本格施行によって、日中でもしつこい取立てを禁止する、違反業者に対して金融庁が出す処分の幅が大きく広がる、など、いっそう貸金業者への規制が厳しくなりました。
さらに2010年半ばまでには、貸付金額の総量規制や、出資法の上限金利を20%に引き下げることも決まっています。(詳細は金融庁のサイトで見られます)

また、この法改正では、貸金業界が自主規制やカウンセリングなどを行う業界団体を設置するように定められており、新たな業界団体「日本貸金業協会」が発足し、いくつかの自主規制を設けました。

例えば、以下のような総量規制に関するルールがあります。
●毎月の返済額を借り手の月収の3分の1(または年収の36分の1)に抑える総量規制
●50万円以上のリボ払い契約の際には、借り手に源泉票等収入を証明する書類の提出を求める
●リボ払いの返済期間を30万円までの場合は3年以内、30万円以上の場合は5年以内とする

クレジットカードを持っている人やサラ金からの借入がある人は、ここ半年ぐらいの間に「利用規約の改定」の通知を受けた人が少なくないと思いますが、これはこのような自主規制ルールにあわせた動きです。

その他にも、
●午前7時~9時と午後5時~10時の時間帯でのTVCM放映禁止
●屋外看板の午前0時以降の点灯禁止

など、広告に関する自主規制も設けられていますが、ネット上の広告に関しては、各社のホームページに掲載すべき内容は規制されているものの、そのホームページに誘導するためのバナー広告等への規制は一切ありませんので、大手ポータルサイト等に頻繁に表示される下品なサラ金のバナー広告は今後も無くならないかもしれません。

上限金利の引下げも、すでに大手サラ金などは法律の施行に先行して進めているようですが、これにあわせて融資の審査が厳格化されているようです。
新規融資申込者の成約率(申し込んだ人のうち実際に融資を受けられたひとの割合)は最近では4割程度だという話もあり、出資法の上限金利が変わる2010年までには3割にまで落ち込むだろう、と予測している人もいます。

「日本貸金業協会」のサイトも、金融庁のサイトも、やたらと「多重債務者対策」「多重債務者問題」という言葉が目立ちますが、金利を下げ、総量規制を行い、新規融資者の数を減らすことが「多重債務者対策」になると思っているのではないかと心配になります。
実際、成約率を下げれば、借りる人数は減りますし、総量規制をすれば借入額は減りますから、今後、数字の上では「多重債務者」は減少して行くかもしれません。
しかし、借りたくても借りられず、「多重債務者」にすらなれない人が増えてしまうことが考えられます。

金融庁は各自治体の窓口にこんな対応マニュアルを配布して、「親切に対応しましょう」などと指導しているようですが、役所がするべきなのは、多重債務者になってしまった人の相談に乗ることよりも、多重債務者になる前に何らかの救済を行うことではないかと思います。
(この「対応マニュアル」の構成や言い回しの中に私のサイトにとても似ている部分がいくつかあって、ちょっと気持ちが悪いです。このようなマニュアルですから、どれも似たり寄ったりになるのだとは思いますが・・・)
「相談窓口の充実」に加えて、金融庁は「融資制度」「学校教育」「ヤミ金取締強化」も「多重債務問題改善」のためのプログラムとして挙げています。
いずれも他の省庁の参加なしには実現しないことですから、金融庁がどれだけ本気になって他省庁がその気になるように働きかけて行くのかを見守っていく必要がありそうです。

「日本貸金業協会」の方も、別に貸金業者が自主的に作ったわけではなく、法律で定められたからできたものです。自主規制も法律で定めるように言われたから定めただけで、この団体が前向きに多重債務問題に取り組む団体になるとは思いにくいです。
上記に挙げた、ネットのバナー広告は一例ですが、一見前向きに見える「自主規制」にも、似たような「抜け穴」はたくさんあると思います。
「自主規制団体」なんて、下手をすればただの天下り先になってしまう恐れもありますから、この団体の"本気度"も現段階ではよくわかりません。

改正貸金業法の施行とそれを取り巻く一連の動きが、本当に「多重債務問題解決」につながるのかどうか、少し長い目で見極めて行かなくてはならないと思います。

2007年11月28日水曜日

話題の事件報道から思うこと

謎の行方不明事件が一転、身内間の金銭トラブルによる殺人事件だったことがわかったあの事件。「借金女王」として、思うところがたくさんあります。
まだ完全に解決したわけではないので、報道されていることがすべて事実だとは言い切れませんが、下に引用した記事などを読む限り、私がサイトで何度も言ってきたこと、

●身内であっても、借金の名義貸しは禁物
●家族に内緒で借金を抱えてはいけない
●どんなに頼まれても、借金の連帯保証人にだけは断るべき

というようなことの信憑性が、最悪の形で裏付けられてしまった、と感じています。
Yahoo!ニュース 11月28日15時1分配信 時事通信
香川県坂出市のパート従業員三浦啓子さん(58)と孫娘2人が行方不明となり、三浦さんの義弟川崎政則容疑者(61)=死体遺棄容疑で逮捕=が3人の殺害を供述した事件で、同容疑者の妻(4月に病死)が三浦さんに多額の金を貸し、同容疑者が「おまえのせいで人生が狂った」と激高していたことが28日、分かった。
県警坂出署捜査本部は、同容疑者が妻と三浦さんとの金銭トラブルに恨みを募らせた結果、三浦さんらを殺害したとみて、詳しい動機を追及している。
三浦さんと同容疑者の妻は姉妹。関係者によると、三浦さんの元夫はうどん店の経営などがうまく行かずに借金を抱え、同容疑者の妻が連帯保証人になっていた。妻は三浦さんの求めに応じて、多額の資金を工面。金のやりとりは10数年前から繰り返し行われ、総額は数百万円に上るとみられる。

容疑者の奥さんは、身内である姉のためを思って連帯保証人になったり、借金の名義貸しをしたのでしょう。
別の報道によれば、容疑者は「妻が亡くなった後に知らない借用書がみつかった」と周囲に話していたようですから、奥さんは夫を心配させたくないと思って、借金の事実を自分の胸の中にしまったまま他界したのかもしれません。

頼まれて連帯保証人になるのも、借金の名義貸しをするのも、そのことを他の人に内緒にすることも、その場を穏便に済ませ、人間関係を維持することになるのかもしれませんが、所詮はその場しのぎに過ぎません。
亡くなっている方を悪く言うようで少し気が引けますが、容疑者の奥さんは連帯保証人や名義貸しではない方法で姉への愛情を示すべきだったと思いますし、夫にもきちんと相談しなくてはならなかったと思います。

このような事件にまで発展してしまうのはレアケースかもしれませんが、最悪こんなことになってしまいかねない、ということを、今家族に隠れて借金を作っている人、名義貸しや連帯保証を誰かに頼まれてどうしようか考えているというような人には、良く胸に刻んで欲しい、と思うのです。
自分では良かれと思って取っている行動が、後でとんでもないトラブルに発展してしまうかもしれないのです。

容疑者を擁護するつもりはまったくありませんが、亡くなった家族の遺品を整理して、まったく知らない借金の借用書が出てくれば、誰でも大きなショックを受けると思います。
その借金が本人の遊興費などではなく、身内の代わりに借りてあげたお金だとわかれば、ぶつけようのない怒りがこみ上げてくるのも当然ではないかと思います。
もちろん、その怒りに任せて人の命を奪うなどということは、絶対に許されませんが、名義を貸した先に「怒鳴り込んでやろう」と思うくらいまでは理解できない話ではありません。
容疑者の奥さんは、「夫に心配をかけまい」と、借用書を見つからないように隠していたのかもしれませんが、もし、事前に容疑者がその借金のことを知っていれば、ひょっとすると、怒鳴り込みには行っても、命まで奪うほどの凶行には至らなかった可能性もあったかもしれません。

亡くなった奥さんが残した借金の督促を容疑者が受けていたのかどうかは報道を読んでもわかりませんが、もし受けていたとしたら、容疑者には1年前の団信廃止の影響も及んでいたことになります。

こんな世の中ですから、いつ何が起こるかわかりません。
もし、借金があることを家族に隠したまま不測の事態が起こるようなことがあれば、残された家族は大きなショックを受けますし、大きなトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。

人間関係の様々なトラブルの中でも、殺人事件にまで発展するようなトラブルはほとんどが恋愛問題か金銭問題でしょう。
お金にまつわるトラブルや事件は、身内同士の間でも頻繁に起こっています。遺産相続や保険金など、家族間だからこそ大金が動き、他人同士の金銭トラブルよりも、身内間の金銭トラブルの方が、よりドロドロしてしまいます。
家族が健全で安定した生活をしていくために、お金は絶対に必要なものですが、それ故に家族間でのお金に関する隠し事は、大トラブルに発展する危険性を常にはらんでいると思います。
こんな恐ろしい事件に発展することは滅多にないかもしれませんが、今借金を抱えている人には、この事件をこんな視点でも見てもらえれば、と思います。

2007年9月2日日曜日

【貧困】型多重債務と債務整理"後"

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この2ヵ月余りの間に、日本ではプロミスとレイクの経営統合が発表され、アメリカのサブプライムローンの破綻に伴う世界的な株価の下落もありました。参議院選挙もありました。
その度に、思うところもあって、記事を書きかけはしていたのですが、うまくまとめることができませんでした。このような大きなニュースに対するコメントは私がしなくても他にしている人がたくさんいるので、今更コメントはしません。

大きなニュースが気になる一方で、ここ数ヶ月、自分のサイトの運営について少し考えることがありました。

私のサイトの掲示板でも、借金や債務整理に関する他の掲示板でも、現在借金に苦しんでいるにもかかわらず「債務整理をして何年経つとまた借金ができるのか」「特定の債権者を任意整理からはずせば、そこから引き続き借りられるのか」と言った質問の書き込みが定期的にあります。
そういう質問に対して、私も含めた多くの回答者は「債務整理をする前から新たに借りることを考えているようでは反省が足りない」「そんなことでは債務整理をしてもまた破綻するのは目に見えている」というような回答をします。「ちゃんと生活を見直して、借金しないで済むような家計を作りましょう」とアドバイスをします。

そのような回答をしながらも、最近、こうした質問をする人がみんな、反省が足りず、家計の管理がずさんな人たちばかりなのかなぁ、と思うようになってきました。
私が債務整理をしたのはもう7年も前の話で、当時はバブル崩壊によって急激に収入が減ったり失業したりした末の、いわば「バブル清算型」の債務整理だったと思います。
債務整理は自分の周りを覆っていたバブル(泡)をキレイに洗い流すようなもので、その後は等身大の身の丈に合った生活をすれば、借金とは無縁の生活を比較的容易に取り戻すことができました。
しかし、今多重債務に苦しんでいる人たちにとって、借金は自分を膨らませて見せる「泡」などではなく、自分の生活の穴の開いた部分を借金で埋めることで何とか等身大をキープすることができているのかもしれない、という気がしてきました。
債務整理する前からその後の借金の心配をする人は、債務整理をしても、その後の生活の展望がまったく見えてこないのかもしれない、と思うようになりました。

そのような漠然とした思いに方向付けを与えてくれたのが、「貧困襲来」という本でした。

バブル期前の1980年頃、「一億総中流時代」という言葉をよく聞いたように思います。
日本の世帯の多くがサラリーマン世帯で、誰もが自分は特別金持ちでも貧乏人でもない「普通の人」という意識を強く持っていました。
そして、戦後しばらくは確かにあった「貧困問題」は、日本人全員が「中流」になったことで消滅したと言われ、もはや「貧困」という言葉すら聞かなくなりました。
聞くとすれば、アフリカやアジアなど発展途上国の話でした。

ところが、数年前から日本でも餓死者のニュースが出るようになりました。日本で餓死者が出たことは、とても衝撃的でしたが、そのニュースの中でも「貧困」という言葉は使われなかったように思います。
最近は、「格差」「ワーキング・プア」「ネットカフェ難民」といった言葉は日々ニュースの中で飛び交っていますが、要するにこれは「貧困問題」です。
でも「貧困」という言葉そのものが今の日本人には刺激が強すぎるのでしょうか。
国もマスコミもあくまで「格差問題」として処理しようとしています。

この本を読んで、これまで漠然と感じていた、政府の言う「再チャレンジ」や「セイフティーネット」などに対する胡散臭さの正体が少し見えてきた気がしました。
今の政府や政治家の発言のトレンドは「ある程度の格差は容認する」というものです。
「がんばった人がそうでない人より良い思いをするのは当然」という言い回しは、一見正論ですが、裏を返せば「良い思いができないのはがんばりが足りないから」ということになります。
がんばって、寝食も削って働いて、それでも生活が苦しい人が「ワーキング・プア」と最近呼ばれるようになりましたが、それでも「格差容認発言」は今でも否定されることはほとんどありません。おそらく、普通の働き方をしていても「ワーキング・プア」とは認めてもらえず、単に「がんばっていない人」と言われてしまうのではないでしょうか。
本当に寝食を削り、病気になっても働いて、ボロボロにならなければ「ワーキング・プア」とは認めてもらえないのです。

本来はそのような人のために生活保護の制度があります。
生活保護は、寝たきりで働けない高齢者のためだけの制度ではありません。
働いて収入がある若い人でも、その収入が国の定めた「最低生活費」に満たなければ生活保護を受けることができます。
この本には、自分の「最低生活費」計算できるエクセルシートを収録したCDが付いています。(ここからダウンロードもできます)
これで計算すると、私の収入も「最低生活費」より少ないことがわかりました。本来は私でも毎月数万円の生活保護を受けることも可能です。

しかし、昨今の年金問題を見ればわかるように、国は国民からお金を「取る」ことには熱心ですが、国民にお金を「渡す」ことには非常に嫌がります。
生活保護もなるべく支給しないで済むように、受給の申請に来た人を何としてでも追い返そうとする自治体が多いそうです。
「生活保護は65歳以上で病気などで働けず、養ってくれる家族がいない人でないと受給できない」というような虚偽の説明も平気でするし、仕事のない人には「仕事を探す努力が足りない」「家族に養ってもらえ」と追い返すそうです。
「ここに来る前にハローワークに行きなさい」と言われるそうです。
そして、ハローワークで「パソコンもできないような人に紹介する仕事はない」と言われ、私が教えているパソコン教室に来る人も毎月数人はいます。
ウチのパソコン教室の授業料は世間の相場よりはかなり安く設定していますが、それでも失業中の人にはかなり痛い出費だろうと思います。

生活保護を打ち切られて餓死した人も、福祉事務所が、深夜のコンビニのバイトで何とか自分が食べる分だけを稼いでいる息子さんに電話をして「親を養え」と再三言ったようです。
幼い子供を抱えた母子家庭のお母さんには「子供を施設に預けて働け」と言うそうです。
もちろん、私が申請に行っても「もっと仕事を増やせ」と門前払いされると思います。

こうして、本来は生活保護を受給できる人が役所に門前払いされれば、後はサラ金・ヤミ金に頼るしかなくなります。
建前では国が用意しているはずの「セイフティー・ネット」には、実際には大きな穴が空いていて、その穴からこぼれ落ちた人を最後に受け止める「ネット」がサラ金・ヤミ金になってしまっています。
このような人たちがサラ金からお金を借りて多重債務に陥ったのだとしたら、債務整理をするだけでは何の解決にもなりません。
債務整理によって、穴の空いた「セイフティー・ネット」の上に一度は引き上げられたとしても、再びその穴から下へ落ちることしかできないのです。

仮に多少時間をかけて、安定した収入を得られる仕事が見つかるまでの間だけでも生活保護を支給してもらえれば、その悪循環から抜け出せる人もいるはずです。
しかし、今日・明日の生活に困っている人は、時間をかけて安定収入を得られる仕事を探している暇などなく、低賃金でも、その日に手元に現金が入る日雇いの肉体労働などを選ばざるを得ません。日雇い労働は一般的に低賃金で、その日にならなければ仕事があるかどうかもわかりません。
そんな状態の人に「生活を見直して、借金しないで済む堅実な生活をしましょう」などと言っても、まったく的外れなアドバイスにしかなりません。

この本の作者がやっている、貧困者を支援する「もやい」というNPOや、「全国生活保護裁判連絡会」では、生活保護の申請を門前払いされてしまった人をサポートする活動などを行っています。
生活保護を支給してもらえずに困窮している人も、サラ金やヤミ金に手を出す前に、このような団体に相談をして、何とか生活保護を受給して欲しい、と願います。

この10年弱の間に国が推し進めてきた「改革」によって、「格差社会」になってしまったことは誰もが認めることです。
しかし、「がんばった人」と「がんばらなかった人」という観点でその格差の両端に人を振り分けるのは間違っています。
がんばってもうまくいかない人もいれば、大資産家の家に生まれて、がんばらなくても巨万の富を得られる人もいるのです。

この本を読んで、今まで漠然と感じていた【貧困】型多重債務者は、確かに存在するということが明確になりました。
そして、このような人たちは債務整理だけしても「健全な無借金生活」を手にすることは非常に困難だということもわかりました。「生活を見直せ」「しっかり働け」というアドバイスが、かえって彼らを追い詰めてしまう危険性があることも認識しました。

私ができることは、前述の「もやい」や「生活保護裁判連絡会」の存在を教えてあげて、根本的に生活費が足りない人は、生活保護の受給をするようにアドバイスする程度のことしかありません。

あとは、穴が空いた「セイフティー・ネット」の穴が一刻も早くふさがれて、最後の頼みの綱がサラ金やヤミ金でなくなることを強く願うのみです。

2007年5月28日月曜日

なぜハーバライフはネットスパムを続けるのか

裏日記の方にも書いたように、最近、Google AdSenseから配信される広告がマルチ商法のハーバライフのビジネス勧誘広告に独占されてしまう事態が起きています。
Googleだけではなく、他のテキスト広告やリスティング広告、ビジネス関連の掲示板やmixiの中でも同じような文言での勧誘活動が横行しているそうです。

マルチ商法会員によるブラインド勧誘は今に始まったことではありませんが、「自宅のパソコンで1日2時間の在宅ワーク」などというフレーズの広告を出していることが、私にはよく理解できませんでした。
マルチ商法は商品を会員になって購入し、自分の下に会員を増やし、下位会員が商品を購入することによって、ロイヤリティを得ることができるビジネスです。
商品そのものを直接触らせるところから始まるビジネスのはずなのに、どうして「PCでの在宅ワーク」になってしまうのかが不思議でたまりませんでした。

そこで、「在宅ワーク」になったマルチ商法ビジネスとはいったいどんなものかを自分なりに考えてみました。

なぜハーバライフはネットスパムを続けるのか

最初はこのブログの記事として書いていたのですが、長くなってしまたので、サイト内のコンテンツとして掲載することにしました。
ぜひ読んでみててください。

2007年4月2日月曜日

「大車輪」の落日

「何度借りても1週間は無利息」の"ノーローン"という特約で有名になったサラ金S社。
この"ノーローン"を使った自転車操業は債務者から「大車輪」と命名され、「借金返済」をうたった多くのブログで、利息「節約」法として推奨されていました。

そのS社も4月から上限金利を利息制限法に合わせて引き下げることにし、既存客の再審査を行ったようです。
また、特約の見直しも行って、「1週間無利息」特約は月1度のみしか適用されなくなるようです。

その結果、長年「大車輪」を続けていた人の中にも、融資枠をゼロにされた人がいたようで、関連のブログや掲示板などはちょっとした騒ぎになっています。

ここ1年ほどの貸金業界を取り巻く流れを見ていれば、サラ金が顧客の選別や儲からない商品の見直し等をいつ始めてもおかしくないことは、わかりそうなものです。
ATMに毎週熱心に通い続ける情熱を、少しはニュースや「大車輪」ネタ以外のサイトを見ることにも向けていれば、今になってそんなに大騒ぎをすることもなかったのではないでしょうか。

「大車輪」による利息「節約」法とは、

S社で借入れ→1週間後に他社("相方"というそうです)で同額を借りて完済(S社は無利息)→翌日S社に同額を借りて他社に完済(他社には1日分だけ利息が発生)→1週間後に他社で同額を借りて完済

を繰り返すことによって、利息は月間4日分しか発生しないので、利息が「節約」できるという理屈です。

これを行うためには、熱を出そうが、大地震が来ようが、毎週必ず2日はATM等に通う必要があります。しかも必ず前回から数えて7日目と8日目でなければいけません。

そこまでしても、例えば元金50万円・年利18%なら「節約」できる利息は月6,500円。
がんばって毎週2回ATM通いをしなくても、ちょっと生活を見直せば、そう無理をしなくても「節約」できそうな金額ですが、彼らは週2回のATM通いにまい進しています。

そんなに「大車輪」って「節約」になるのでしょうか。

もし、私が任意整理をしないで「大車輪」による返済を行っていたらどうなっていたか、試しに計算してみました。

私が任意整理をはじめたのは2000年5月。
この時の債務総額は約115万円です。(詳細な債務内容はサイトの「債務表」にあります)

この時S社から100万円借りて「大車輪」を始めたとします。
当時は15%を切るような低い金利の個人向け融資はほとんどなかったので「相方」になるB社の年利は18%です。
S社からは個人では最大でも100万円ぐらいまでしか借りられないようなので、残りの15万円は年利18%で通常の月々返済でC社に返します。

当時の私の返済能力は月3万円です。
まずは月々返済のC社を早く減らすために、C社には毎月2万円返済し、残り1万円は「大車輪」の元金に充当することにします。

C社は9ヶ月目に完済できるので、10ヶ月目からは「大車輪」の元金を月3万円のペースで減らします。

これで完済するのは41ヶ月目の2003年9月です。
41ヶ月間の返済総額は約121万円、このうち利息は約5万8千円です。

実際に私が任意整理をして完済したのは40ヶ月目の2003年8月ですが、過払いもあって途中からは月の返済額は1万円程度に減りました。
もし最後まで月々3万円づつ返済していれば、22ヶ月目の2002年2月に完済していた計算になります。
返済総額は弁護士費用も合わせて約65万円、このうち利息はもちろん0円です。

私のケースで月々同じ金額を返済するとしたら、任意整理は「大車輪」より返済総額も返済期間も半分ということです。
「大車輪」をしている人が大好きな「利息の節約」という意味でも、任意整理をすれば「大車輪」しても払わなくてはならない利息約5万8千円が全額「節約」できます。

任意整理した方が「節約」になるのは明らかなのに、それでも債務整理ではなく「大車輪」を選ぶ理由は「ブラックになりたくないから」だそうです。

しかし、毎週融資枠満額を借りて、利息がつかないうちに満額返済し、翌日にはまた満額借りるなんてことを延々と繰り返すのは「私は自転車操業中の多重債務者です」と自らアピールしていることに他なりません。

「債務整理や延滞をしなければ"ブラック"ではない」というのは妄想だと私は思います。
これから総量規制もされるようになってくれば、信用情報に「延滞」「整理」という過去のブラック情報が無くても、「今の借金の中身」が融資の審査に大きな影響を及ぼす可能性はいっそう高まります。

ほとんど元金の減らない自転車操業を続けている人は、S社のみならず、他のサラ金からも破綻予備軍の「要注意フラグ」を立てられて監視されている、と思っていた方が良いと思います。
そして、かつてバブル崩壊後に銀行が一斉に行ったような「貸し渋り」「貸し剥がし」をするタイミングを、今はサラ金がはかっているのかもしれません。

今回、S社が「1週間無利息特約」を見直したことは、良かったと思います。
こんな特約は、多重債務者を多重債務者のまま飼い殺しにするような、虚しい延命措置でしかないと思います。

しかし、ついに「大車輪」も落日の日を迎えました。
これをきっかけに、自転車操業をしてきた多くの多重債務者が、少しも「節約」になんかなっていない「大車輪」の呪縛から解き放たれ、「将来利息ゼロ」「過払い利息は返還」という、本当に「節約」できる手段があることに気付いてくれることを願います。

2007年3月23日金曜日

借金も二極分化時代?

最近のアメリカの株式市場下落の一因に「サブプライムモーゲージ」の状況悪化が挙げられています。
「サブプライムモーゲージ」というのは、いわゆる信用状態が低い人向けの住宅ローンなのですが、この焦げ付きが最近急増しています。この影響で貸し手のローン会社が相次いで自己破産したり、債権売却に走り、市場に不安感をもたらしたようです。

一方、先週のニュース記事によれば、国内の大手サラ金が揃って貸し渋りの傾向にあるようです。
大手消費者金融4社に新規の融資を申し込んでも、審査の結果断られるケースが急増している。貸金業の上限金利が2009年にも現行の年29.2%から20%に引き下げられるため、経営環境の悪化をにらみ、各社とも審査を厳しくして焦げ付きリスクが低い融資にシフトしているためだ。大手消費者金融の融資拡大路線の見直しが鮮明になってきた。

アイフル、アコム、武富士、プロミスの大手4社の1月の新規融資申込者は計13万6000人。このうち、審査を通過して実際に融資を受けた人の比率を示す「成約率」をみると、4社の平均は前年同期比19.4ポイント低い44.1%に落ち込んだ。7万6000人が門前払いされた計算だ。特にアイフルの成約率は36.0%と同34.1ポイントも低下。貸出先を厳選した跡がうかがえる。
(後略)
2007年3月13日 フジサンケイ ビジネスアイ

日本のサラ金とアメリカのサブプライムモーゲージ会社を同列に置くことはできないと思いますが、どちらかと言うと信用状態が低い人に比較的高い金利で貸し付ける、という点では共通するものがあります。
日米では政治的な背景も市場の背景も異なるとはいえ、このふたつの話題を見ると「借りられない人はより借りにくくなる」という構図が見えてきます。

どうして今、アメリカの住宅ローンが次々破綻しているのでしょうか。
少し長いですが、Yahoo!ニュースで産経新聞のわかりやすい記事を見つけたので引用します。
「サブプライムローン」。日本ではなじみが薄いが、信用力の低い顧客向けに高金利で貸し出す米国の住宅ローンのことで、低所得層にマイホームを提供してきた。しかし、ここに来て大量の焦げ付き問題が表面化し、住宅ローン会社の業績不安や破綻が続発。株価急落の大きな要因となっている。

「サブプライム危機」が13日のニューヨーク市場を襲った。経営難に陥った住宅融資最大手ニュー・センチュリー・フィナンシャルの株式がニューヨーク証券取引所で一時取引停止となり、市場全体に不安が波及、ダウ工業30種平均は今年2番目の下げ幅となった。

なぜこれほどの影響を与えるのか。住宅投資ブームが始まった2000年、サブプライムが住宅ローン全体に占める比率はわずか2.4%。だが、その後、シェアは拡大して06年は13.4%に達した。

米国人は持ち家志向が強い。しかも成長に応じて大きい貝殻に移るヤドカリのように、所得の上昇に応じて家を頻繁に買い替える特徴がある。

しかし、景気減速で住宅需要自体に陰りが出ると、金融機関は新たな顧客層の開拓に迫られた。標的となったのが「黒人やヒスパニック(中南米系移民)らマイノリティーだった」(ワシントン郊外の業者)。

住宅ローン会社は、高根の花だった持ち家購入を積極的な営業であおり、貸し出し量の維持と住宅市場全体の底上げを図った。「頭金なし」「所得証明書類の必要なし」という不当なセールスも横行したという。

これらは右肩上がりを前提とした融資だったが、全米不動産協会によると、昨年10~12月期の全米都市部の住宅価格は75地域で下落か横ばいを記録し、上昇した71地域を初めて上回った。

エコノミストの間では「限定的な問題で、経済全体に波及する可能性は少ない」(ハドソン研究所のジョン・ウェイカー上級研究員)という見方が多い。それでも市場が過剰反応するのは、アメリカンドリームを支える「住宅成長神話」の崩壊を暗示しているからかもしれない。
3月15日8時1分 産経新聞
日本のサラ金がバブル崩壊後、銀行等が貸し渋りに転じたのに乗じて、ガンガンCMをし、適当な審査で高い金利をつけて、どんどん貸しまくって伸びてきたのと同じように、アメリカでも"住宅バブル"が終わった後、与信の低い人にも高い金利をつけてガンガン貸しまくっていた様子がわかります。

アメリカの"住宅バブル"が終わりかけの頃、私もテレビの経済ニュースで見たアメリカの個人向け融資の実態に驚いて、日記を書いたことを思い出しました。(2003年1月13日の日記)
この時の「こんなやり方で個人消費減少に歯止めをかけようとしても、いずれ破綻してしまうだろう」という私の感想も、間違いではなかったということになります。
無茶な融資は借り手だけでなく、貸し手側をも破綻に追い込む、というのがアメリカの「サブプライムモーゲージ問題」が教えてくれていることのひとつと言えるでしょう。

これを教訓としたのかどうかはわかりませんが、日本のサラ金も上限金利の引き下げを目前にひかえ、今までの"貸しまくり"の方針を転換しつつあるのかもしれません。
クレカ会社を見ても、最近はだいたいクレカ本体以外に貸金専用のカードを作っていて、これはクレカ本体のキャッシング機能よりも金利が低く設定されており、比較的与信の高い顧客をそちらに誘導して、リスクの棲み分けをしようとしてるかのようです。

サラ金も、大手は銀行と提携して「サラ金の顧客よりは信用度が高く、銀行の顧客よりは信用度が低い層」をターゲットにした商品(モビット、@ローンなど)を展開していますが、業界再編、不良債権処理などを終えて体力を回復した銀行は、銀行独自での貸付にも再び力を入れ始めています。

そうなるとサラ金は、これからも信用度が一定以下の顧客を相手にせざるを得ないわけですが、そのリスクを金利に転嫁できない以上、その中でも信用度がなるべく高めの人たちを狙って貸し付けていくということになって行くのかもしれません。

しかし、

信用度が低い=所得が低い=お金が無い

ということです。

もっとも「お金を借りたい」と思うはずの人が、もっも「お金が借りられない」人になるわけですから、ますます格差は広がって行きます。

「だから、ヤミ金にすがらざるを得ない人が増えて、ヤミ金が横行するから、上限金利の引き下げは反対」というのが、サラ金の理屈です。

でも、それではダメで、本来は国や自治体が、ヤミ金にすがらなくても済むようなシステムを作って欲しいところです。
国や自治体がお金を貸し与える、ということではなく、公営住宅に細かい条件を付けずに低家賃で住まわせてあげるとか、医療費や光熱費の支払いを減免したり延ばしたりしてあげるとか、やり方は色々あるはずです。
「再チャレンジ」とか立派な言葉は掲げていても、最低限の寝る場所と食べる物すら確保できない人に「再チャレンジ」する意欲なんて沸いてくるわけがありません。

アメリカの「サブプライムモーゲージ問題」も、自由主義経済の名のもとに国がサブプライムローン会社の無茶な営業姿勢を放任してきたツケが回ってきた、とも言えます。
「金利を高くして、本来借りられないはずの人が、借りられるようになる」のが正しいのではなく、「借りられない人は借りなくても済む」社会を作っていかなくてはならないと思います。

借りられない人がますます借りられなくなってヤミ金に殺到するような、いわば「借金二極分化時代」が本格化することがないように願うばかりです。

2007年3月7日水曜日

PASMO特需?カード会社の顧客争奪戦

今月18日から首都圏私鉄各線がICカード型乗車券PASMOを導入します。
首都圏の私鉄・地下鉄は、今は「パスネット」という使い捨ての磁気カード型乗車券を発行しているのですが、JR東日本ですでに導入されている「Suica」同様に1枚のカードにお金をチャージして繰り返し使うタイプに切り替えるということです。
「PASMO」導入と同時に「Suica」との相互利用が可能になるので、首都圏で私鉄もJRも利用する人にとっては、わざわざ2種類の乗車券を持つ必要がなくなって便利になります。

私は私鉄沿線の住民で、時々JRも利用します。
新しいモノが好きなので、去年から、JRを利用する時は「モバイルSuica」を使っています。私鉄に乗るときは磁気のパスネットを使ってきましたが、「モバイルSuica」だけにまとめられるようになるので、便利だしお財布からカードが1枚減るので喜んでいます。
カード型の「PASMO」や「Suica」にお金をチャージするには、駅の券売機にカードと現金を入れる方法と、クレジットカードでチャージする方法があります。
あらかじめクレジットカードを登録しておくと、チャージ残高が指定額を下回ると、自動的にクレジットカードから一定額をチャージしてくれる「オートチャージ」という方法もあります。

この「オートチャージ」は確かに便利なシステムです。
でも、私も多重債務経験者ですし、このサイトの読者の多くも多重債務経験者だと思います。
そういう者にとっては、無自覚なまま自動的にクレカ決済が行われてしまうシステムにはちょっと怖さを感じます。

「PASMO」のオートチャージ用に指定できるクレジットカードは、私鉄系のクレジットカードなどに限られています。
去年の暮れあたりから、私鉄系クレジットカード会社各社が、この「オートチャージ」を売り物にして、連日新規会員獲得キャンペーンを大々的に行っています。
私の家の最寄り駅は、私鉄2線が乗り入れている駅なので、両方のカード会社が改札前に特設申し込みカウンターを設置して毎日勧誘をしています。
駅前にある私鉄系のスーパーでは、清算を終えてレジ袋に商品を詰めている最中に勧誘のおねえさんがやってきて、逃げられないのを良いことに執拗に勧誘してきます。

昨年秋頃から、私鉄各駅には「PASMO」導入を告知するポスターやチラシなどをみかけるようになりましたが、「現金で券売機からお金をチャージできる」ということがほとんど書かれていなくて、「クレカでオートチャージができて便利」ということばかりが強調されています。
その上、駅の改札口付近ではクレカ会社が「PASMOにオートチャージできます」と、大きなのぼりを掲げた特設申し込みカウンターを連日設置して、通る人に声をかけて勧誘しているので、まるでクレカがないと電車に乗れなくなってしまうのではないか、と錯覚しそうになります。

おかげで私の母は、すっかり「私鉄系のクレカがないと電車に乗れなくなる」と思い込んでしまい、あわてて私鉄系のカードを申し込んでしまいました。
その上、親切のつもりだったのでしょうが、なんと私の分までも申し込んでしまいました。

その私鉄系クレカ自体は持ったことがありませんでしたが、発行会社は私が多重債務時代に長期延滞をして、訴状まで送ってきた信販会社だったので、「いくら何でも審査には通らないだろう」と思っていたら、普通に発行されてしまいました。
利用枠はかなり低いですが「PASMO」のオートチャージ用に使うだけなら、十分過ぎるほどです。
こんな私にまでカードを発行してしまうなんて、どこかの掲示板風に言うなら"必死だな"という感じです。

確かに「PASMO」とのヒモ付けは長期安定需要が見込めます。単価が低い(オートチャージ1回当り3,000円)のでリスクも低く、カード会社にとっては絶好の顧客数拡大のチャンスかもしれません。
私鉄系各カード会社がしのぎを削って顧客争奪戦を繰り広げているのもわかります。
発行会社にとっては不良顧客のはずの私を取り込んでまでも、この戦いに勝とうとしているのでしょうか。

私にまでカードを発行したということは、相当与信の低い人にもこの私鉄系クレジットカードは発行されるということではないかと思います。
クレジットカードである以上は、「PASMO」のオートチャージ以外のお買い物もできるわけで、多重債務気味の人がカードを利用枠いっぱいまで使ってしまい、肝心の「PASMO」のチャージが止められて、家に帰れなくなってしまう、なんて冗談みたいな話が現実になってしまう可能性もないとは言えません。
「たかが電車賃」ですが、「されど電車賃」です。
私も本当に借金を抱えて困っていた時は100円200円の電車賃も勿体なくて、2~3駅なら迷わず歩いていました。

「PASMO」のオートチャージサービスは、クレカ会社にとっては安定した顧客獲得のメリットがあり、鉄道会社側にとっても信販会社に電車賃の収納業務を委託するようなもので、駅ごとの出納業務も大幅に簡略化でき、メリットは十分です。
このため、鉄道会社側も現金チャージよりもクレカによるオートチャージの利便性ばかりを大々的にアピールした「PASMO」導入告知を行っているのだと思います。

しかし、鉄道という公共サービスの利用代金までもが「ツケ払い」になることで、これまでには考えられなかったような新たな問題も出てくると思います。
日本もどんどん「キャッシュレス化」が進んできていますが、鉄道のような古くからあるサービスや、ずっと現金主義だった日本人の多くが「このキャッシュレス化」のスピードに形だけではなく本質的な部分で追い付いて行けるのかどうか、見守って行く必要があるかもしれません。

私にも鉄道系カードがせっかく発行されましたが、私は上記のように「モバイルSuica」を現金チャージで使うので、このカードにヒモ付けした「PASMO」は作りません。
系列のスーパーや駅ビルで現金で買い物をしてもポイントが付くそうなので、専らポイントカードとして利用することになりそうです。
"現金主義"で行くと決めた元多重債務者にとって、電車代まで「クレカ払い」というのは、どうも馴染めません。

2007年1月23日火曜日

サラ金のリストラがはじまる?

先週末にアイフルが大規模なリストラを発表したのを受けて、"ざまぁみろ"的なコメントをしている債務者や元債務者が運営するブログをいくつか見かけました。
アイフルが潰れたり、ほかのサラ金に吸収合併されるのでは、という心配をしている人もいました。
でも、私はアイフルは実にしたたかに生き残りを図っているように感じます。

アイフルが大リストラ…有人店舗4分の3・人員2千人
1月20日20時49分配信 読売新聞
消費者金融大手のアイフル(本社・京都市)は20日、グループ全体で2713ある店舗を半分以下の1193店に削減し、このうち有人店舗は現在の約4分の1の213店にすると発表した。
これに伴う人員削減が、契約社員などを含め最大で2000人規模になる可能性があるとしている。
昨春の全店業務停止処分で顧客離れが進んでいたほか、貸金業規制法の改正による規制強化で収益減が避けられないと判断した。他の大手も業容の縮小に着手する公算が大きい。
アイフル本体では、9月末をめどに有人店舗を463から100に、無人店舗を1440から900に減らし、計1000店体制とする。
上記の記事が出たのは先週末ですが、週明けの株式市場ではこのリストラ策が好感され、アイフルの株価は上昇しました。

アイフル株が堅調、踏み込んだリストラで環境変化に対応
1月22日10時47分配信 ロイター
午前の株式市場でアイフル<8515.T>が堅調。20日にグループ全体で正社員400人の希望退職者を募ることや有人店舗の約8割を削減し213店舗にすることなど踏み込んだリストラ策を発表したことで買いが入っている。
グレーゾーン金利の廃止を盛り込んだ改正貸金業法の成立を受けて、経営環境の悪化に先手を打った対応が株式市場で評価されているという。
上の読売の記事では、あたかも社員数や店舗数の削減が業務縮小につながるような書き方がされていますが、決してそんなことはありません。
これから、サラ金がもっとも力を入れていくであろう融資窓口はインターネットだからです。

窓口に足を運ぶ必要もないし、従業員と顔を合わせる必要も会話する必要もない「ネット融資」という形態は、消費者側のニーズにマッチしているはずです。
そういう意味で、サラ金は「ネット通販」にはもっとも親和性の高い業態のひとつではないでしょうか。

サラ金のテレビCMは一時よりはかなり減少していますが、PCでもケータイでも、ネットサーフィンをしていてサラ金のバナーや広告を見ない日は恐らくないと思います。
Yahooをはじめとする大手ポータルサイトから、個人サイトのアフィリエイトバナーまで、サラ金広告はネット上のあらゆる場所で幅を利かせています。

サラ金の広告にはさまざまな規制が課せられていますが、ネットのバナー広告はスペースに制約があるからなのか、法整備が追いついていないのか、今のところ「野放し」状態です。

特にひどいのがアフィリエイトです。

サラ金の広告バナーだけをズラッと並べたようなブログやサイトを見たことがあると思います。
多くは個人がアフィリエイトバナーを並べて作ったサイトのようですが、このようなサイトには平気で

「審査が甘い」「借りやすい」「ブラックでも借りられる」

などとうたってあります。
サラ金自身がこんなキャッチコピーの広告を出したら、明らかな貸金業法違反になります。
貸金業法
(誇大広告等の禁止)
第十六条  貸金業者は、その業務に関して広告又は勧誘をするときは、貸付けの利率その他の貸付けの条件について、著しく事実に相違する表示若しくは説明をし、又は実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示若しくは説明をしてはならない。
2  前項に定めるもののほか、貸金業者は、その業務に関して広告又は勧誘をするときは、次の各号に掲げる表示又は説明をしてはならない。
一  顧客を誘引することを目的とした特定の商品を当該貸金業者の中心的な商品であると誤解させるような表示又は説明
二  他の貸金業者の利用者又は返済能力がない者を対象として勧誘する旨の表示又は説明
三  借入れが容易であることを過度に強調することにより、資金需要者の借入意欲をそそるような表示又は説明
四  公的な年金、手当等の受給者の借入意欲をそそるような表示又は説明
五  貸付けの利率以外の利率を貸付けの利率と誤解させるような表示又は説明
3  貸金業者は、その業務に関して広告又は勧誘をするときは、資金需要者等の返済能力を超える貸付けの防止に配慮するとともに、その広告又は勧誘が過度にわたることがないように努めなければならない。
でも、個人サイトだから何の規制も罰則もなく、やりたい放題できるのです。
恐らく、サラ金もこんなキャッチコピーの下に自社のバナーが掲載されていることはわかっているはずです。
法律で規制されて自分で言うことができない「魅力的な」キャッチコピーを、個人アフィリエイターがどんどん言って勧誘してくれるのですから、笑いが止まらないでしょう。

サラ金のアフィリエイト報酬は、他の業種の報酬に比べるとゼロが2つ3つ余計につくほど高額です。
だからこそ、みんな必死になってバナーをベタベタ貼ったサイトを作り、そのサイトに誘導するために、お金を払って自らアフィリエイト広告の広告主になる人さえもいます。

でも、サラ金にとっては、高いテレビCMを打つことに比べればずっと負担が軽いと思います。
リンク元も把握できますから、効果測定も簡単で、より効率的な広告出稿ができます。

街頭でティッシュを配らなくても、駅前のビルに高い家賃を出して事務所を構えなくても、カネに目がくらんだ個人アフィリエイターが、貸金業法違反になるような"魅力的な"宣伝文句を使って、どんどん顧客を集めてくれるのですから、従業員や店舗を減らしたところで、収益も減るような心配はまったくしていないと思います。

昨年の一件で高額な団信保険料の負担もなくなりましたし、過払い金返還用の引当金を積んで大赤字決算をしたことにより、税金負担もかなり軽くなりました。
さらに人員と店舗を削減することで、経費は大幅に減少し、その分を既存メディアに比べれば割安なネット広告へシフトすることで、収益性は大幅にアップする可能性があります。

普通の人にとって"サラ金でお金を借りる"という行為には、多少なりとも気後れやためらいがあるはずです。
サラ金業界は、その気後れを払拭するために「無人契約機」を登場させたり、明るいイメージの広告を打ち続けてきました。
それでも、「サラ金に入るところを人に見られたくない」というような思いが、何人かにひとりの足は確実に止めてきたはずです。
ネットで「誰にも見られず」「簡単に」サラ金からお金を借りられるようになったことで、その"最後の枷"とでも言うべき、ためらいや気後れがほぼ完全に払拭されてしまうことになります。

インターネットは最強の「無人契約機」なのです。

それは、サラ金にとっては新たな顧客獲得のチャンスとなり、私のような者にとっては、新たな多重債務問題に発展する懸念材料なのです。