2007年3月23日金曜日

借金も二極分化時代?

最近のアメリカの株式市場下落の一因に「サブプライムモーゲージ」の状況悪化が挙げられています。
「サブプライムモーゲージ」というのは、いわゆる信用状態が低い人向けの住宅ローンなのですが、この焦げ付きが最近急増しています。この影響で貸し手のローン会社が相次いで自己破産したり、債権売却に走り、市場に不安感をもたらしたようです。

一方、先週のニュース記事によれば、国内の大手サラ金が揃って貸し渋りの傾向にあるようです。
大手消費者金融4社に新規の融資を申し込んでも、審査の結果断られるケースが急増している。貸金業の上限金利が2009年にも現行の年29.2%から20%に引き下げられるため、経営環境の悪化をにらみ、各社とも審査を厳しくして焦げ付きリスクが低い融資にシフトしているためだ。大手消費者金融の融資拡大路線の見直しが鮮明になってきた。

アイフル、アコム、武富士、プロミスの大手4社の1月の新規融資申込者は計13万6000人。このうち、審査を通過して実際に融資を受けた人の比率を示す「成約率」をみると、4社の平均は前年同期比19.4ポイント低い44.1%に落ち込んだ。7万6000人が門前払いされた計算だ。特にアイフルの成約率は36.0%と同34.1ポイントも低下。貸出先を厳選した跡がうかがえる。
(後略)
2007年3月13日 フジサンケイ ビジネスアイ

日本のサラ金とアメリカのサブプライムモーゲージ会社を同列に置くことはできないと思いますが、どちらかと言うと信用状態が低い人に比較的高い金利で貸し付ける、という点では共通するものがあります。
日米では政治的な背景も市場の背景も異なるとはいえ、このふたつの話題を見ると「借りられない人はより借りにくくなる」という構図が見えてきます。

どうして今、アメリカの住宅ローンが次々破綻しているのでしょうか。
少し長いですが、Yahoo!ニュースで産経新聞のわかりやすい記事を見つけたので引用します。
「サブプライムローン」。日本ではなじみが薄いが、信用力の低い顧客向けに高金利で貸し出す米国の住宅ローンのことで、低所得層にマイホームを提供してきた。しかし、ここに来て大量の焦げ付き問題が表面化し、住宅ローン会社の業績不安や破綻が続発。株価急落の大きな要因となっている。

「サブプライム危機」が13日のニューヨーク市場を襲った。経営難に陥った住宅融資最大手ニュー・センチュリー・フィナンシャルの株式がニューヨーク証券取引所で一時取引停止となり、市場全体に不安が波及、ダウ工業30種平均は今年2番目の下げ幅となった。

なぜこれほどの影響を与えるのか。住宅投資ブームが始まった2000年、サブプライムが住宅ローン全体に占める比率はわずか2.4%。だが、その後、シェアは拡大して06年は13.4%に達した。

米国人は持ち家志向が強い。しかも成長に応じて大きい貝殻に移るヤドカリのように、所得の上昇に応じて家を頻繁に買い替える特徴がある。

しかし、景気減速で住宅需要自体に陰りが出ると、金融機関は新たな顧客層の開拓に迫られた。標的となったのが「黒人やヒスパニック(中南米系移民)らマイノリティーだった」(ワシントン郊外の業者)。

住宅ローン会社は、高根の花だった持ち家購入を積極的な営業であおり、貸し出し量の維持と住宅市場全体の底上げを図った。「頭金なし」「所得証明書類の必要なし」という不当なセールスも横行したという。

これらは右肩上がりを前提とした融資だったが、全米不動産協会によると、昨年10~12月期の全米都市部の住宅価格は75地域で下落か横ばいを記録し、上昇した71地域を初めて上回った。

エコノミストの間では「限定的な問題で、経済全体に波及する可能性は少ない」(ハドソン研究所のジョン・ウェイカー上級研究員)という見方が多い。それでも市場が過剰反応するのは、アメリカンドリームを支える「住宅成長神話」の崩壊を暗示しているからかもしれない。
3月15日8時1分 産経新聞
日本のサラ金がバブル崩壊後、銀行等が貸し渋りに転じたのに乗じて、ガンガンCMをし、適当な審査で高い金利をつけて、どんどん貸しまくって伸びてきたのと同じように、アメリカでも"住宅バブル"が終わった後、与信の低い人にも高い金利をつけてガンガン貸しまくっていた様子がわかります。

アメリカの"住宅バブル"が終わりかけの頃、私もテレビの経済ニュースで見たアメリカの個人向け融資の実態に驚いて、日記を書いたことを思い出しました。(2003年1月13日の日記)
この時の「こんなやり方で個人消費減少に歯止めをかけようとしても、いずれ破綻してしまうだろう」という私の感想も、間違いではなかったということになります。
無茶な融資は借り手だけでなく、貸し手側をも破綻に追い込む、というのがアメリカの「サブプライムモーゲージ問題」が教えてくれていることのひとつと言えるでしょう。

これを教訓としたのかどうかはわかりませんが、日本のサラ金も上限金利の引き下げを目前にひかえ、今までの"貸しまくり"の方針を転換しつつあるのかもしれません。
クレカ会社を見ても、最近はだいたいクレカ本体以外に貸金専用のカードを作っていて、これはクレカ本体のキャッシング機能よりも金利が低く設定されており、比較的与信の高い顧客をそちらに誘導して、リスクの棲み分けをしようとしてるかのようです。

サラ金も、大手は銀行と提携して「サラ金の顧客よりは信用度が高く、銀行の顧客よりは信用度が低い層」をターゲットにした商品(モビット、@ローンなど)を展開していますが、業界再編、不良債権処理などを終えて体力を回復した銀行は、銀行独自での貸付にも再び力を入れ始めています。

そうなるとサラ金は、これからも信用度が一定以下の顧客を相手にせざるを得ないわけですが、そのリスクを金利に転嫁できない以上、その中でも信用度がなるべく高めの人たちを狙って貸し付けていくということになって行くのかもしれません。

しかし、

信用度が低い=所得が低い=お金が無い

ということです。

もっとも「お金を借りたい」と思うはずの人が、もっも「お金が借りられない」人になるわけですから、ますます格差は広がって行きます。

「だから、ヤミ金にすがらざるを得ない人が増えて、ヤミ金が横行するから、上限金利の引き下げは反対」というのが、サラ金の理屈です。

でも、それではダメで、本来は国や自治体が、ヤミ金にすがらなくても済むようなシステムを作って欲しいところです。
国や自治体がお金を貸し与える、ということではなく、公営住宅に細かい条件を付けずに低家賃で住まわせてあげるとか、医療費や光熱費の支払いを減免したり延ばしたりしてあげるとか、やり方は色々あるはずです。
「再チャレンジ」とか立派な言葉は掲げていても、最低限の寝る場所と食べる物すら確保できない人に「再チャレンジ」する意欲なんて沸いてくるわけがありません。

アメリカの「サブプライムモーゲージ問題」も、自由主義経済の名のもとに国がサブプライムローン会社の無茶な営業姿勢を放任してきたツケが回ってきた、とも言えます。
「金利を高くして、本来借りられないはずの人が、借りられるようになる」のが正しいのではなく、「借りられない人は借りなくても済む」社会を作っていかなくてはならないと思います。

借りられない人がますます借りられなくなってヤミ金に殺到するような、いわば「借金二極分化時代」が本格化することがないように願うばかりです。

2007年3月7日水曜日

PASMO特需?カード会社の顧客争奪戦

今月18日から首都圏私鉄各線がICカード型乗車券PASMOを導入します。
首都圏の私鉄・地下鉄は、今は「パスネット」という使い捨ての磁気カード型乗車券を発行しているのですが、JR東日本ですでに導入されている「Suica」同様に1枚のカードにお金をチャージして繰り返し使うタイプに切り替えるということです。
「PASMO」導入と同時に「Suica」との相互利用が可能になるので、首都圏で私鉄もJRも利用する人にとっては、わざわざ2種類の乗車券を持つ必要がなくなって便利になります。

私は私鉄沿線の住民で、時々JRも利用します。
新しいモノが好きなので、去年から、JRを利用する時は「モバイルSuica」を使っています。私鉄に乗るときは磁気のパスネットを使ってきましたが、「モバイルSuica」だけにまとめられるようになるので、便利だしお財布からカードが1枚減るので喜んでいます。
カード型の「PASMO」や「Suica」にお金をチャージするには、駅の券売機にカードと現金を入れる方法と、クレジットカードでチャージする方法があります。
あらかじめクレジットカードを登録しておくと、チャージ残高が指定額を下回ると、自動的にクレジットカードから一定額をチャージしてくれる「オートチャージ」という方法もあります。

この「オートチャージ」は確かに便利なシステムです。
でも、私も多重債務経験者ですし、このサイトの読者の多くも多重債務経験者だと思います。
そういう者にとっては、無自覚なまま自動的にクレカ決済が行われてしまうシステムにはちょっと怖さを感じます。

「PASMO」のオートチャージ用に指定できるクレジットカードは、私鉄系のクレジットカードなどに限られています。
去年の暮れあたりから、私鉄系クレジットカード会社各社が、この「オートチャージ」を売り物にして、連日新規会員獲得キャンペーンを大々的に行っています。
私の家の最寄り駅は、私鉄2線が乗り入れている駅なので、両方のカード会社が改札前に特設申し込みカウンターを設置して毎日勧誘をしています。
駅前にある私鉄系のスーパーでは、清算を終えてレジ袋に商品を詰めている最中に勧誘のおねえさんがやってきて、逃げられないのを良いことに執拗に勧誘してきます。

昨年秋頃から、私鉄各駅には「PASMO」導入を告知するポスターやチラシなどをみかけるようになりましたが、「現金で券売機からお金をチャージできる」ということがほとんど書かれていなくて、「クレカでオートチャージができて便利」ということばかりが強調されています。
その上、駅の改札口付近ではクレカ会社が「PASMOにオートチャージできます」と、大きなのぼりを掲げた特設申し込みカウンターを連日設置して、通る人に声をかけて勧誘しているので、まるでクレカがないと電車に乗れなくなってしまうのではないか、と錯覚しそうになります。

おかげで私の母は、すっかり「私鉄系のクレカがないと電車に乗れなくなる」と思い込んでしまい、あわてて私鉄系のカードを申し込んでしまいました。
その上、親切のつもりだったのでしょうが、なんと私の分までも申し込んでしまいました。

その私鉄系クレカ自体は持ったことがありませんでしたが、発行会社は私が多重債務時代に長期延滞をして、訴状まで送ってきた信販会社だったので、「いくら何でも審査には通らないだろう」と思っていたら、普通に発行されてしまいました。
利用枠はかなり低いですが「PASMO」のオートチャージ用に使うだけなら、十分過ぎるほどです。
こんな私にまでカードを発行してしまうなんて、どこかの掲示板風に言うなら"必死だな"という感じです。

確かに「PASMO」とのヒモ付けは長期安定需要が見込めます。単価が低い(オートチャージ1回当り3,000円)のでリスクも低く、カード会社にとっては絶好の顧客数拡大のチャンスかもしれません。
私鉄系各カード会社がしのぎを削って顧客争奪戦を繰り広げているのもわかります。
発行会社にとっては不良顧客のはずの私を取り込んでまでも、この戦いに勝とうとしているのでしょうか。

私にまでカードを発行したということは、相当与信の低い人にもこの私鉄系クレジットカードは発行されるということではないかと思います。
クレジットカードである以上は、「PASMO」のオートチャージ以外のお買い物もできるわけで、多重債務気味の人がカードを利用枠いっぱいまで使ってしまい、肝心の「PASMO」のチャージが止められて、家に帰れなくなってしまう、なんて冗談みたいな話が現実になってしまう可能性もないとは言えません。
「たかが電車賃」ですが、「されど電車賃」です。
私も本当に借金を抱えて困っていた時は100円200円の電車賃も勿体なくて、2~3駅なら迷わず歩いていました。

「PASMO」のオートチャージサービスは、クレカ会社にとっては安定した顧客獲得のメリットがあり、鉄道会社側にとっても信販会社に電車賃の収納業務を委託するようなもので、駅ごとの出納業務も大幅に簡略化でき、メリットは十分です。
このため、鉄道会社側も現金チャージよりもクレカによるオートチャージの利便性ばかりを大々的にアピールした「PASMO」導入告知を行っているのだと思います。

しかし、鉄道という公共サービスの利用代金までもが「ツケ払い」になることで、これまでには考えられなかったような新たな問題も出てくると思います。
日本もどんどん「キャッシュレス化」が進んできていますが、鉄道のような古くからあるサービスや、ずっと現金主義だった日本人の多くが「このキャッシュレス化」のスピードに形だけではなく本質的な部分で追い付いて行けるのかどうか、見守って行く必要があるかもしれません。

私にも鉄道系カードがせっかく発行されましたが、私は上記のように「モバイルSuica」を現金チャージで使うので、このカードにヒモ付けした「PASMO」は作りません。
系列のスーパーや駅ビルで現金で買い物をしてもポイントが付くそうなので、専らポイントカードとして利用することになりそうです。
"現金主義"で行くと決めた元多重債務者にとって、電車代まで「クレカ払い」というのは、どうも馴染めません。