2007年4月2日月曜日

「大車輪」の落日

「何度借りても1週間は無利息」の"ノーローン"という特約で有名になったサラ金S社。
この"ノーローン"を使った自転車操業は債務者から「大車輪」と命名され、「借金返済」をうたった多くのブログで、利息「節約」法として推奨されていました。

そのS社も4月から上限金利を利息制限法に合わせて引き下げることにし、既存客の再審査を行ったようです。
また、特約の見直しも行って、「1週間無利息」特約は月1度のみしか適用されなくなるようです。

その結果、長年「大車輪」を続けていた人の中にも、融資枠をゼロにされた人がいたようで、関連のブログや掲示板などはちょっとした騒ぎになっています。

ここ1年ほどの貸金業界を取り巻く流れを見ていれば、サラ金が顧客の選別や儲からない商品の見直し等をいつ始めてもおかしくないことは、わかりそうなものです。
ATMに毎週熱心に通い続ける情熱を、少しはニュースや「大車輪」ネタ以外のサイトを見ることにも向けていれば、今になってそんなに大騒ぎをすることもなかったのではないでしょうか。

「大車輪」による利息「節約」法とは、

S社で借入れ→1週間後に他社("相方"というそうです)で同額を借りて完済(S社は無利息)→翌日S社に同額を借りて他社に完済(他社には1日分だけ利息が発生)→1週間後に他社で同額を借りて完済

を繰り返すことによって、利息は月間4日分しか発生しないので、利息が「節約」できるという理屈です。

これを行うためには、熱を出そうが、大地震が来ようが、毎週必ず2日はATM等に通う必要があります。しかも必ず前回から数えて7日目と8日目でなければいけません。

そこまでしても、例えば元金50万円・年利18%なら「節約」できる利息は月6,500円。
がんばって毎週2回ATM通いをしなくても、ちょっと生活を見直せば、そう無理をしなくても「節約」できそうな金額ですが、彼らは週2回のATM通いにまい進しています。

そんなに「大車輪」って「節約」になるのでしょうか。

もし、私が任意整理をしないで「大車輪」による返済を行っていたらどうなっていたか、試しに計算してみました。

私が任意整理をはじめたのは2000年5月。
この時の債務総額は約115万円です。(詳細な債務内容はサイトの「債務表」にあります)

この時S社から100万円借りて「大車輪」を始めたとします。
当時は15%を切るような低い金利の個人向け融資はほとんどなかったので「相方」になるB社の年利は18%です。
S社からは個人では最大でも100万円ぐらいまでしか借りられないようなので、残りの15万円は年利18%で通常の月々返済でC社に返します。

当時の私の返済能力は月3万円です。
まずは月々返済のC社を早く減らすために、C社には毎月2万円返済し、残り1万円は「大車輪」の元金に充当することにします。

C社は9ヶ月目に完済できるので、10ヶ月目からは「大車輪」の元金を月3万円のペースで減らします。

これで完済するのは41ヶ月目の2003年9月です。
41ヶ月間の返済総額は約121万円、このうち利息は約5万8千円です。

実際に私が任意整理をして完済したのは40ヶ月目の2003年8月ですが、過払いもあって途中からは月の返済額は1万円程度に減りました。
もし最後まで月々3万円づつ返済していれば、22ヶ月目の2002年2月に完済していた計算になります。
返済総額は弁護士費用も合わせて約65万円、このうち利息はもちろん0円です。

私のケースで月々同じ金額を返済するとしたら、任意整理は「大車輪」より返済総額も返済期間も半分ということです。
「大車輪」をしている人が大好きな「利息の節約」という意味でも、任意整理をすれば「大車輪」しても払わなくてはならない利息約5万8千円が全額「節約」できます。

任意整理した方が「節約」になるのは明らかなのに、それでも債務整理ではなく「大車輪」を選ぶ理由は「ブラックになりたくないから」だそうです。

しかし、毎週融資枠満額を借りて、利息がつかないうちに満額返済し、翌日にはまた満額借りるなんてことを延々と繰り返すのは「私は自転車操業中の多重債務者です」と自らアピールしていることに他なりません。

「債務整理や延滞をしなければ"ブラック"ではない」というのは妄想だと私は思います。
これから総量規制もされるようになってくれば、信用情報に「延滞」「整理」という過去のブラック情報が無くても、「今の借金の中身」が融資の審査に大きな影響を及ぼす可能性はいっそう高まります。

ほとんど元金の減らない自転車操業を続けている人は、S社のみならず、他のサラ金からも破綻予備軍の「要注意フラグ」を立てられて監視されている、と思っていた方が良いと思います。
そして、かつてバブル崩壊後に銀行が一斉に行ったような「貸し渋り」「貸し剥がし」をするタイミングを、今はサラ金がはかっているのかもしれません。

今回、S社が「1週間無利息特約」を見直したことは、良かったと思います。
こんな特約は、多重債務者を多重債務者のまま飼い殺しにするような、虚しい延命措置でしかないと思います。

しかし、ついに「大車輪」も落日の日を迎えました。
これをきっかけに、自転車操業をしてきた多くの多重債務者が、少しも「節約」になんかなっていない「大車輪」の呪縛から解き放たれ、「将来利息ゼロ」「過払い利息は返還」という、本当に「節約」できる手段があることに気付いてくれることを願います。