2008年6月12日木曜日

ヤミ金訴訟で最高裁が全額説を採用

マネーロンダリングのためにスイスの銀行に送金されていたお金が一部返還されたことなどで話題になっていた、旧五菱会系のヤミ金訴訟ですが、10日に最高裁の判決が出ました。
旧五菱会系ヤミ金訴訟:元本分も損賠命令 最高裁が初判断
指定暴力団山口組旧五菱会系のヤミ金融事件を巡り、愛媛県の被害者11人が「ヤミ金の帝王」と呼ばれた梶山進受刑者(58)に約3500万円の賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は10日、著しい高金利の取り立てを受けた被害者に対しては、利息分だけでなく元本分も返すべきだとの初判断を示した。その上で利息分のみの支払いを命じた2審・高松高裁判決(06年12月)を破棄し、賠償額を算定し直させるため審理を差し戻した。

民法は、社会倫理に反する不法な行為で渡した(不法原因給付)財産は返還請求できないと定める。小法廷は「不法原因給付により被害者が得た利益を賠償額と相殺するのは、法の趣旨に反する」と指摘。出資法の上限金利の年29.2%を大幅に上回る年数百~数千%の暴利で貸し付けた今回のケースは不法原因給付に当たり、賠償額から元本分を控除するのは許されないと判断した。

2審は元本分は被害者の利益になっているとして賠償額から控除し、計約1400万円の支払いを命じていた。一方、全国の176人が梶山受刑者に賠償を求めた別の訴訟で東京地裁は3月、元本分の賠償も認める判決を出し、判断が分かれていた。
毎日jp
この裁判は、五菱会系のヤミ金に法外な利息の支払いを求められたり、厳しい取り立てを受けた被害者が損害賠償を求めた裁判です。

これが最高裁まで行った理由は、高裁の判決がいわゆる「差額説」を取ったからです。
「差額説」というのは、このケースの場合だと、ヤミ金側が被害者に支払う賠償金は、取り立てた利息分だけで、貸し付けた元金はもともとヤミ金側のお金だから賠償する必要はない、という考え方です。
たとえば、ある被害者がヤミ金から10万円借り、後に元利合わせて15万円返済していた、という場合だったら、この「差額説」を取ると、被害者が受け取れる賠償金は5万円ということになります。

一方、同じケースで被害者が受け取る賠償金は、返済した全額、つまり15万円になる、というのが「全額説」の考え方です。
今回の最高裁の判決は、この「全額説」を取りました。
「全額説」を取った判決こそが、多重債務問題に関わる多くの人達が待ち望んでいた判決でした。

引用した記事を読んで、首をかしげている人もいるかもしれません。
元金はもともとヤミ金側のお金なのだから、それを賠償金に含めれば借りた方が丸儲けではないか。
違法な利息は無効だから返還するとしても、元金だけは返済するのが当たり前ではないか。
そのように思う人は少なからずいるでしょう。

しかし、ヤミ金に元金を返してしまうことによる問題点にも目を向けてみて欲しいのです。

上記に引用した記事のあるページにも解説されていますが、今回の最高裁判決では、ヤミ金がお金を貸す行為は「不法原因給付」だから「全額説」が採用されました。
「不法原因給付」というのは民法で規定されています。
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。
というもので、要するに「悪いことのために人に渡したお金や物は返してもらえないよ」ということです。

ヤミ金業そのものが違法であることは誰もが認めるところですが、そのヤミ金にも「元金だけは返しなさい」と言っている債務整理アドバイスのサイトを少なからず見かけます。
しかし、ヤミ金の貸付はまさに「不法原因給付」なのです。

確かに元金はヤミ金業者のお金ですが、自分のお金を他人に渡すのは、後で違法な高金利をつけて返済をさせるために他なりません。
「不法原因給付」どころか「違法原因給付」なのです。
ヤミ金の貸付元金は違法行為のための「道具」だということです。
もし、元金だけでも返済すれば、そのお金はまた新たな違法行為の「道具」として、別の人に貸し付けられ、その人から法外な金利をむしり取ることになってしまうのです。

また、以前にも書きましたが、もし「元金だけは返済する」という理屈がまかり通ってしまえば、ヤミ金業は違法な商売にも関わらず、金銭的なリスクは「ゼロ」だということになってしまいます。
元金だけは確実に返ってくるのなら、利息収入という儲けはなくても、投資した分は確実に回収できることになります。
つまりヤミ金業は、金銭的には「ノーリスク・ハイリターン」な商売だということになります。
そんな「ヤミ金保護主義」が許されるわけがありません。

「訴訟になれば、取り立てた利息だけでなく、元金の回収すら叶わない」とヤミ金業者に知ってもらい、ヤミ金業は「ハイリスク」な商売だと思ってもらうことで、ヤミ金業者数の減少にもつながってくるはずです。

ヤミ金の貸付元金は違法行為のための「道具」です。
傷害事件の犯人から銃器を取り上げるべきなのと同じように、ヤミ金から貸付元金という「道具」を取り上げることに、躊躇は必要ないと私は思います。