2012年6月28日木曜日

マイホームは持つべきか

私は債務整理をした頃も、現在も、独身でアパート住まいなので身軽です。
債務整理も、単純に金融業者からの借り入れを整理するだけだったので、個人の債務整理の中でもシンプルなものでした。

しかし、家族がいて、家や土地などの資産を持っていると、そう簡単には行きません。
サイトに相談掲示板を設置していた頃は、「家を手放さずに借金を整理したい」「住宅ローンが残っていて、家を売ってもマイナスになってしまう」など、切実なご相談が数多く寄せられていました。

私は家を持ったことがないので、相談者の方々の「マイホームへの愛着」は想像するしかありませんでした。
「ローンで苦しめられてきた家にそこまで固執しなくても、賃貸暮らしの方が身軽で余計な費用もかかりませんよ」とアドバイスしたこともあります。

家を持つと、賃貸暮らしでは不要だった費用がいくつか発生します。

まずは固定資産税がかかります。

そして、マンションなら住宅ローンとは別に、毎月管理費や修繕積立金を払わなくてはなりません。
この金額はマンションによって異なりますが、小さなアパートを一部屋借りるぐらいの金額にはなります。
よくマンション販売の広告に「家賃並みのローン返済額」を宣伝文句にしているモノを見かけますが、これには上記の管理費や修繕積立金はまず含まれていません。

広告をよーく見ると、虫メガネでも使わないと読めないような小さな文字で、管理費などの記述がありますので、購入を考えている人は見逃さないようにしてくださいね。

マンションではなく一戸建てを買ったとしても、長く住んでいれば定期的なメンテナンスは必要ですし、子供が成長して、間取りの変更が必要になる場合もあります。
まだまだ購入時の住宅ローンは残っているのに、別にリフォームローンを組んだ、という話も時々聞きます。

そういうわけで、修繕費は大家さん任せ、固定資産税も不要で、長期ローンを抱える必要もなく、引っ越したくなればいつでも引っ越せる賃貸暮らしの方が、ずっと良い、というのが長年の私の考え方でした。

しかし最近、少しその考え方が変わってきています。

昨今は雇用環境の悪化などに伴って賃貸住宅の家賃不払いも増えてきています。
その対策として、貸主側は、固定収入やしっかりした連帯保証人がいないと、部屋を貸さないようになって来ていると聞きます。
中には、「保証会社」と言う名の、実態は取立て代行業者との保証契約を義務化して、数日の家賃の遅れでも強引な取り立てや追い出しを掛ける業者もある聞きます。
肩身の狭い賃貸暮らしより、いっそ持家の方が、平穏に暮らせるのではないかと、思わずにはいられません。

さらに、今年になってあるFP(ファイナンシャル・プランナー)さんとお知り合いになって、新たな視点でのお話をうかがったことも要因のひとつです。

私も以前から、このブログやサイトの中で「目先の借金だけにとらわれずに、長期的な視点で家計全体の計画を立てましょう」ということを訴えていましたが、FPさんが作成する「ライフプラン」は、まさにこの「長期的視点に立った家計の計画」です。

「借金を整理する」と決めると、少しでも早く借金を減らすために、最低限の生活費以外を全部借金の返済に充てるような無茶な返済計画を立ててしまいがちです。
ですが、例えば子供の成長などに伴って、「最低限の生活費」の金額自体が大きく変わります。

債務整理の場合、だいたい返済期間は5~7年程度ですが、この間に仮に「子供の進学」というライフイベントがあるとしたら、その年の必要生活費は跳ね上がります。
それに合わせて都合よく収入も増えることはまずあり得ないので、やはりその分を用意できるゆとりを持った返済計画を立てなくてはなりません。

たった数年の債務整理でもそのような視点が不可欠なのですから、返済期間が30年以上に及ぶ住宅ローンを組むのに、長期的な家計のプランニング無しに臨むのは無謀以外の何物でもありません。

ですが、「家を買おう」と思った人は、予算より先に「欲しい家」に目が行ってしまいがちだ、と先のFPさんは言います。
「この家が欲しいから、買えるだけの住宅ローンをどうやって借りるか」というロジックに陥ってしまい、後々の家計負担を考えない人が多いそうです。
実は「欲しい」と思った家も、少しでも高い物件を売ろうとする不動産屋さんの巧みな誘導による場合すらあると言います。

貸金業者からお金を借りる場合でも「借入限度額」が設定されます。
ですが、「借入限度額」は必ずしも「返済可能額」ではありません。
「借入限度額」を「返済可能額」だと勘違いしてしまった人が、返済能力を上回った借金を返済するために更に借金をし、多重債務に陥ってしまうのです。

住宅ローンもそれと同じで、現在の収入などに応じて「いくらまでなら貸せますよ」という上限額が提示されます。
でも、それが必ずしも「返済できる金額」とは限らないのです。

だから、本当は、家を買おうと思ったらまずは資金計画を立て、その予算内で収まる家を探す、という順番が正しいのですが、住宅メーカーや不動産屋さんにローンの相談をしても、借入上限額いっぱいの物件を薦められてしまうのが、彼らも商売でやっている以上、当然のことです。

そうして家を買った人が、子供の成長に伴って住宅ローンに負担を感じるようになり、生活費が足りなくなり、サラ金から借金をして返せなくなり、「子供には大学進学を諦めてもらった」というような話が、私のサイトの相談掲示板に何度か書き込まれたことがあります。
ですが、その人たちも、家を建てる時にきちんとライフプランを立てて、家計に見合った家を買っていれば、そんなことにはならなかったかもしれません。

「30年も40年も先の家計のことなんてわからない」という人は、上記のFPさんのような方のコンサルティングを受けてみるのも良いかもしれません。
このFPさんは、住宅メーカーに勤めた経験もある方なので、ライフプランを作って資金計画を立てたあと、物件に関するアドバイスもしてくれます。
コンサルティング料はかかりますが、家計のムダな出費(たとえば生命保険料)もチェックしてくれますので、差し引きではプラスになる可能性もあります。

長々と書いてきましたが、つまり、このFPさんが教えてくれたのは、きちんとした家計と返済の計画を立てたうえで購入する家は、いざという時はお金に変えられる「資産」になるということ、
「家」という「資産」を持つことによって、得られるメリットもある、ということ、
さらに、立地や間取りなど、こだわって建てた家に暮らすことで、賃貸暮らしでは味わえない精神的に豊かな暮らしを得られるということ、などです。

ですから、しっかりしたライフプランと資金計画のもとでなら、家を持つのも良いかもしれない、というのが今の私の考え方です。

ついでですが、消費税が上がりそうな情勢になってきています。
住宅は金額が大きいですから、1%でも税率が変われば、かなりまとまった金額になってしまいます。
住宅購入予算が税込2千万円の場合、消費税率がもし10%になれば、消費税額は5%の現在よりも約86万5千円も増えてしまいます。
つまり、家を建てる予算が86万5千円も減るということになります。
家を建てる予定がある方は、早めに行動した方が良いのかもしれませんね。

住宅ローンの選び方・借り方にも色々ノウハウがあるようですが、またFPさんに教わって、次の機会に書こうと思っています。

2012年3月20日火曜日

「過払い金回収ビジネス」の終わり

1年以上ぶりの更新です。

サイトの開設からもうすぐ13年。
当時はまだ表立って語られることが少なかった、個人の借金問題や債務整理の知識をまとめた私のサイトは開設当初は珍しく、本当に借金に悩む人から興味本位で覗きに来る人まで、たくさんの来訪を受けました。
メディアにも何度か取り上げられました。

その後、次々と類似サイトが開設されました。
弁護士広告も解禁され、専門家もウェブにどんどん参入してきました。
当時「借金」などのワードで検索結果の上位に表示されていた私のサイトの記事もかなりパクられました。
弁護士や司法書士のサイトにもパクられ、弁護士・司法書士を名乗る人から非弁提携のような話を持ちかけられることもありました。

それは、かつて私が"「債務整理マーケット」の悪循環"という記事で懸念を示したように、債務整理が"債務者救済"のためよりも"儲かるビジネス"として急成長して行ったからです。

しかし一昨年あたりから、この「債務整理マーケット」は縮小傾向にあります。
その理由は以下の記事にわかりやすくまとまっているので、ぜひ読んでみてください。

“ポスト過払いバブル”は何でもあり 顕在化する弁護士界の憂鬱な現実|弁護士界の憂鬱 バブルと改革に揺れた10年|ダイヤモンド・オンライン
私が債務整理をした2000年ごろはまだ、過払い金請求は「交渉ごと」でした。
交渉力のある弁護士さんが、債権者と"戦って"取り戻すものでした。
しかし、2006年の最高裁判決を機に、過払い金返還請求に「交渉」も「戦い」も必要なくなりました。
過払い金は請求すれば当然返還されるものとなり、事務処理だけでことが進む「ルーチンワーク」になったのです。
このため、弁護士は名前を出すだけで、実務作業は事務員に任せ、流れ作業のように数多くの債務整理事件をこなす大手の弁護士事務所も乱立しました。
この頃の債務整理事件は、弁護士や司法書士の間で「楽して儲かる」ビジネスとして、大ブームになっていたのだと思います。

地方自治体が税金や社会保険料の滞納者の債務を調査し、債権者に直接過払い金返還を請求して徴収することを検討している、というような記事も、この頃読んだことがあります。(実践したのかどうかは知りませんが)

やがて、景気の低迷とも重なって、もともと体力が弱めの中堅中小のサラ金が倒産したり、買収されたりするようになってきました。
それでも「債務整理マーケット」というより、もはや「過払い金回収ビジネス」となったこの市場の拡大は止まりませんでした。

2006年の最高裁判決の功罪の「罪」の部分は、このような「過払い金回収ビジネス」にお墨付きを与えてしまったことかもしれません。
しかし、「功」の部分もあります。
それが、その後のグレーゾーン金利を撤廃した法改正や総量規制です。

"グレーゾーン"にあった金利を完全に"黒"とみなして返してもらうのが「過払い金回収」であり、「もう"グレー"ではなく"黒"だと最高裁も認めたのだから、"黒い部分"は無くしてしおう」というのが、法改正です。

2010年の法改正を前に、大手サラ金も、クレジットカード会社も2007年頃から貸付金利を当時の利息制限法の規定内に引き下げるようになりました。
この時点で、新たな「過払い金」は発生しなくなりましたが、その分貸金業者の収入も減ることになります。
新たに貸し付ける分の金利を下げても、過去に取った利息の返還請求は続きます。

一時はテレビCMを大量投入し、幼稚園児でも名前を知っていたような大手サラ金業者も、一気に体力を奪われて傾いて行ったのは周知のとおりです。

サラ金は「債務者を食い物にする悪徳業者」のようなレッテルを貼られていますが、「過払い金回収ビジネス」に興じた専門家たちは、そのサラ金を「寄ってたかって食い物にして潰した」と言えなくもありません。

私は専門家ではないので、常に債務者サイドの目線でサイトを運営してきたつもりです。
私自身も過払い金の返還を受けましたが、「債務整理の目的は過払い金を取り戻すことではなく、生活を立て直し、借金の必要が無い生活スタイルを身につけることだ」と一貫して主張してきました。

しかし「過払い金回収ビジネス」がブームになるにつれ、「過払い金を取り戻すことが債務整理の最大のメリットである」というスタンスが専門家サイトでも債務者目線のサイトでも目立つようになって行きました。
その頃から、私のサイトもアクセス数は減り、直帰率が高くなって行きました。
皮肉にも、サイトのトップページに貼ったGoogle AdSence広告には債務整理事件を扱う弁護士・司法書士の広告が次々と表示され、そのクリック報酬だけは増えて行きました。

しかし2009年頃から「過払い金回収ビジネス」はかなり失速してきました。
前述の通り、今後は誰がどれだけ借金をしても新たな過払いは発生しないこと、過去の過払い金も大手サラ金の経営が揺らぐほど回収し尽くしてしまったことなどがその原因です。

そして、今、上述の「ダイヤモンド・オンライン」の記事に書かれているようなことが起こっています。
この記事は「過払い金回収ビジネス」で良い思いをしてきた弁護士・司法書士たちも、そろそろ「次の手」を考えなくては生き残っていけない、という方向に筆が進んでいますが、回収できる過払い金が無くても、借金で首の回らない債務者はまだたくさん存在しており、今後もいなくなることはありません。

金融会社が貸付利率を利息制限法に合わせた後、ここ数年の間に借金を作った債務者は過払い金を抱えていません。
そういう債務者の債務整理事件を扱っても、手間の割に大きな利益になりません。

私が債務整理をした頃は、「債務整理は手間の割にもうからない」として、受任を避ける専門家が多かったそうです。
実際、私がサイトを開設してから最初の2~3年は「受任してくれる弁護士が見つからない」という掲示板への投稿がかなり多かったように記憶しています。
それが、「過払い金回収ビジネス」ブームの到来とともに、ネットでもどこでも「引き受けてくれるところが多過ぎて、どこに頼めばよいのかわからない」という相談に変わって行きました。

ブームが去った今、「儲からなくても債務者のために受任する」というスタンスでブーム以前から債務整理を扱ってきた弁護士さんだけがこのマーケットに残ってくれることは、債務者目線でサイト運営を続けている私にとっては歓迎すべきことです。

上述の「ダイヤモンド・オンライン」の記事にも書かれているような、過払い金請求のルーチンワークしかできず、ろくな交渉能力も持たず、債務者への生活指導もできないような専門家にはさっさとご退場願いたい、と心底思います。

2006年頃から私のサイトは、債務整理マーケットへの多くの専門家の参入に伴い、「一応の役割を終えた」と考えていました。
2008年には相談掲示板も撤去し、大きな更新も一切していません。
しかし、今後、多くの「過払い金回収業者」が撤退して行けば、もう一度、私のサイトにも役割ができてくるのかな、と思うようになってきています。

金利が下がっても、総量規制が設けられても、過払い金回収ビジネスブームが去っても、借金で苦しんでいる人は常に助けを求めてさまよっているのです。