随分前に日記に書いたことがありますが、私の母は無類の阪神タイガースファンです。
京都で育った母は、父親(私の祖父)の影響で、幼い時から阪神一筋です。
母のトラキチ振りを語るエピソードは、ここでは語りつくせないほどたくさんあります。
私も子供の頃は、お小遣いの額や食事のメニューが、阪神の勝敗に大きく左右されていましたので、とにかく阪神を一生懸命応援せざるを得ない環境で育ちました。
小学校の低学年くらいの時、テレビで阪神戦の中継を見ていた時です。私が相手チームの選手の誰かを見て、「この人かっこいいね」と、つい言ってしまったのです。その選手が誰かはまったく覚えていないのですが、多分逆転のタイムリーヒットでも打った姿を見て、そう言ったのではないかと思います。
その時、母がものすごい形相で「そんなこと言う子はうちの子じゃない!」と怒り出しました。そこまで怖い顔の母を見たのはそれが初めてで、その時私は、「母の前で阪神以外の選手を褒めてはいけない」と、幼心に悟ったのです。
その時の母の顔は、トラウマのように私の心の中にしっかりと焼付いて離れないのですが、当の母は、「私がそんなこと言うわけない」と、すっかり忘れているようです。
母はテレビのタレントさんを見る時でさえ、「この人は阪神ファンだから好き、この人は巨人ファンだから、大嫌い!」と言う人で、野球とは何の関係もない番組でも、巨人ファンで有名なタレントさんが出ているから、という理由で見せてもらえないこともありました。
そんな環境で育ってきましたから、私も、自分では野球には関心がないと言っておきながら、世間話が野球の話題になると、いつの間にかムキになって阪神の話をはじめて驚かれる、ということが時々あります。東京で生活していたので、歓迎されないことの方が多かったですが。
18年前、阪神が久しぶりの優勝を果たした年、私はちょうど大学に入ってひとり暮らしをはじめました。お金の使い方もまだ心許なかったのですが、阪神快進撃のおかげで、母が臨時のお小遣いをくれたり、お米を送ってくれたり、ととても気前が良くて、その時は本当に心から阪神に感謝しました。
でも、それから18年間、阪神は低迷を続け、毎年春先には「今年こそ!」と意気込む母も、夏の声を聞く前には何も言わなくなり、1年のほとんどは母の前で「野球の話題はタブー」という日々が続きました。
母は今年から年金を受給する年齢なのですが、ここ数年は「生きているうちに、もう1回くらい優勝が見られるかしら」と弱気なことを言うようになっていました。
そんな母が、今年は毎日、少女のようにはしゃいでいたのは言うまでもありません。
毎朝スポーツ新聞を買ってきて、何度もじっくり読み直し、頼んでなくても、私にも読み聞かせてくれます。
今年は色々な阪神グッズが売っていましたが、母のトラキチは、周りにも有名なので、いろんな人からいろんな阪神グッズをプレゼントしてもらい、母の身の回りは阪神グッズだらけでした。
私も結構忙しくて、「新宿の阪神グッズのショップに行って、これ買ってきて」とか、地方限定グッズをネットで見つけてきて「これ注文して」などと言われたり、携帯の待ち受け画面をトラッキーくん(阪神のマスコット)にしたいと言われて作ってあげたりしていました。
その横から、同じく阪神ファンの父が、「オレは着メロを六甲おろしにしたい」と言い出し、着メロサイトからダウンロードしてあげると、父は元ミュージシャンなので、「これはアレンジが良くない、もっと他のはないのか」などと文句を言われたりして、何だか阪神とともに暮らしていたような気がします。
母はあまり丈夫な方ではなく、すぐ風邪をひいて寝込んでしまったりするのですが、今年はほとんど風邪をひくこともなく、本当に元気に過ごしてきました。
結局日本シリーズは負けてしまいましたが、母と一緒に連日テレビにかぶりついて応援をしていました。
母がこんなに毎日元気でいてくれるのなら、阪神には毎年優勝してもらいたいものです。
今年の阪神優勝の立役者は、何と言っても星野監督です。
その采配ぶりから、低迷を続ける企業すらもヒントを得ようと、管理職論として評した本も出ているようです。
母によると、まずは選手に危機感を持たせたことが良かったのだといいます。
星野監督は、期待できない選手を半分近くリストラしちゃったんですね。
その上で、外から、残った選手とポジションが被るような実力のある選手をたくさん採ってきました。レベルの高いところで、ポジション争いをさせたんです。
ポジション争いがあると、出場した選手はポジションを奪われないように必死でプレーするので、それが勝ちにつながり、勝てば、負け癖がついていた選手に「勝てる」という自信がつく、というわけです。
ですが、競争ばかりだと、殺伐としてしまって、チームスポーツである野球で勝てるわけがありません。
その辺りの「塩加減」が、星野監督は絶妙だったのではないかと思います。
「競争」がある環境を作ることは、そんなに難しいことではないと思います。それを、「闘い」や「争い」ではなく、お互いに高めあえる競争にできるかどうかが、良い管理職かどうかの分かれ目でしょう。
それは、いかにひとりひとりと、きちんと向き合えるか、ということにあるような気がします。「この選手はどんな環境に置くと奮起するのか」「この選手にはどう言ってやるとその気になってくれるのか」ということを、星野監督は良くわかっている人だったように思います。
だからマニュアル本を読んで、良い管理職になろうとしても、なれないように思います。本を読む時間があったら、部下のひとりひとりを良く観察した方が良いのではないでしょうか。
私は良く、「どう言えば、家族や恋人が債務整理する気になってくれるのか」、という相談を受けた時に、「おだててその気になるタイプの人もいれば、叱責されて奮起されるタイプの人もいるから、その人に合った言い方をして欲しい」と返事をします。「どんな言い方でやる気になるのかは、身近にいるあなたが一番よくご存知のはずです」とも言います。
先人に学ぶことも、マニュアルに頼ることも、ひとつの方策ではあるのかもしれませんが、それよりもまずは「人を良く見ること」、それがいろんな場所で「成功」につながる第一歩になるのではないかと思います。
2003年11月10日
母と阪神と成功の秘訣(旧blogより転載)
ニックネーム 借金女王 at 00:00
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