2004年03月09日

四字熟語(旧blogより転載)

私はパソコン教室でインストラクターをしています。いろいろなことを教えていますが、一番多いのが、やはりWordとExcelの授業です。
 最近は、事務系の仕事に就こうと思ったら、新卒でも中途でも、「WordとExcelができる」ことが、最低条件になっている場合がほとんどで、高校生や大学生も結構大勢習いにきています。
 中高年以上の生徒さんは、なかなかパソコンの操作に慣れない人も多くて、時間がかかるのに比べると、学生さんたちは、覚えが早くて教えるこちらも楽な場合が多いのですが、若い子たちを教えていると、時々ショックを受けることがあります。
 Wordの操作は覚えてくれるのですが、練習用に入力してもらう教材の原稿の漢字が読めないのです。
 そんなに難しい文章を打ってもらっているわけではなく、せいぜい新聞のコラム程度の文章なのですが、漢字が読めない、言葉の意味がわからない、ということが時々あります。

 最近、一番ショックだったのは、大学生の男の子が、「師走」を読めなかったことです。
 さらに、びっくりしたのは、「"しわす"だよ」と教えてあげても、「シワスって何ですか?」と聞いてきたことです。
 「12月のこと、師走って言うでしょ?知ってるでしょ?」言っても、「あー、何か聞いたことあるような気がするー」とのん気なものです。
 二十歳になるまで、「師走」という言葉を知らないでいられることの方が、奇跡に近いような気が私はしますが、そんなものなのでしょうか。

 もちろん、漢字が読めるかどうかは、単に年齢の問題ではなく、個人差があります。
 中学生でも、難しい漢字がスラスラ読めるような子もいます。
 逆に、年齢が高いからと言って、漢字が読めるとは限りません。
 かなり有名な大企業を定年退職して、老後の趣味でパソコンを習いにきた男性が「干支」を読めませんでした。

 私は日商ワープロ検定の受検指導もしています。この検定は、単にWordが使えるとか、タイピングが早いだけでは無理で、ビジネス文書の書式やパソコン全体の広い知識が必要です。
 国語の筆記試験もあります。これは、同音異義語や、尊敬語や謙譲語の正しい使い方などが問われます。漢字の読み書きももちろんあります。
 毎回、実技は完璧なのに、筆記試験ができなくて合格できない人が何人かいます。
 この国語の問題には、必ず1問は四字熟語の穴埋め問題が出ます。1問だけなので、合否への影響はそんなにありませんが、四字熟語だけの正答率を見ると、かなり低いものです。
 確かに、現代の日常生活で、四字熟語を知らなくて困ることはほとんどないと思います。
 新聞や雑誌を読んでいても、読めないような四字熟語はほとんど出てきません。
 でも、四字熟語は、漢字を使う文化圏ならではの、端的に状況や心境を言い表すことができる言葉です。
 アメリカでは、定型的なフレーズの単語の頭文字を並べて言ったりすることもあるようですが、それは単なる「略語」でしかなく、文字ひとつひとつに意味がある漢字を並べることとは違います。
 同じ漢字を重ねることで、その意味を強調することができたり、反対の意味の漢字を並べることで、対比が鮮明になったり、たった4文字の組み合わせが、何十文字分のフレーズにも匹敵するような広がりを持っています。
 今の教育のシステムは、四字熟語を、受験のための「暗記物」の範疇に入れてしまっていて、このような実用的な指導をしてくれていません。
 だから、知らないことを責めることはできないと思いますが、彼らには、知らないことを恥ずかしいと思ったり、もっと知りたい、という気持ちが全然ありません。
 多分、四字熟語は「暗記物」にしか過ぎず、実用的なものだとはまったく思っていないからだと思います。
 いくらWordの操作を覚えても、漢字が読めなかったり、言葉を知らなければ、日本語の文書を作ることはできないと思うのですが、パソコンの操作の勉強に比べると、漢字の勉強には余り熱心になってくれません。
 私はそのことに寂しさを感じます。
 学校での教え方にも問題があると思いますし、そもそも四字熟語とかことわざのようなものは、学校で教わるものではなく、日常生活の中で親から自然と吸収するもののような気がします。
 四字熟語が頻繁に日常会話の中に飛び出してくる家庭も、気持ち悪いですが、まったく出てこないのも、文化的に寂しい感じがします。
最初に書いた「師走」が読めなかった男の子は、「立春」とか「冬至」も読めません。意味もよく知らないそうです。お母さんが「今日は冬至だから」と、お風呂にユズを浮かべ、カボチャを煮てくれるような家庭だったら、「冬至」が読めない、なんてことはおそらくありません。

 ちょっと説教くさい内容になってしまいましたが、そうは言っても、私もテレビに出てくる「漢字博士」のようにスラスラと四字熟語が読めるわけではありません。特にワープロを使うようになってからは、書く方になると、壊滅的にダメです。
 四字熟語クイズのサイトを見つけたので挑戦してみましたが、レベル4くらいから、だいぶ怪しくなってきます。

 時代とともに、難しい言葉が易しく、長い言葉が短くなり、カタカナ語が増えるのは、言語の歴史の流れで、当然のことです。昭和40年頃までは「テレビジョンをテレビと省略するなど、けしからん」と言う人もいたのです。
 でも、日本語表現の中に、漢字や四字熟語がなくなって行くのは、何だか寂しい気がします。私が年を取ったからでしょうか。
ニックネーム 借金女王 at 00:00 | パソコン教室のこと