私も最近の子の"算数力"には疑問があって、この話をニュースで見た時には「英語より算数でしょ」と、思わずテレビに突っ込みを入れました。
私はパソコン教室でインストラクターをしていますが、余りにも漢字が読めなかったり言葉の意味を知らない人が多い、ということを随分前に記事にしたことがあります。
Wordを教えている時は、漢字や言葉を知らない人が多いことを痛感しますが、Excelを教えていると、算数もできないのかなぁ、と思うことがよくあります。
Excelを習いに来る人は、就職前の大学生から60才くらいの人まで幅広いですが、特に多いのが20代半ばから30代の人たちで、普通の会社で普通の事務職をやっているような人がほとんどです。
でも、このような人たちに教えていると、Excelの授業ではなく、算数の授業になってしまうことがよくあるのです。
「Excelはほとんど初めて」という人の場合は、まずExcelの画面構成をひと通り説明し、数字や文字データを入力します。そして加減乗除の四則計算式の入力方法を教えます。
ここまでを練習問題でおさらいします。
練習問題は、例えば商品5種類の3ヶ月間の売上げ金額のデータを表にする、というような物です。
これにその四半期の売上目標額を追加で入力します。
そして、数式を入力していきます。
●商品ごと、月ごとに売上金額の合計を求めます
----これは、ほとんどの人が自分で数式を入力することができます。
●売上目標額に対する売上額の目標達成率を求めます
----少し悩む人が出てきます。目標額と売上額の「どちらかをどちらかで割る」ということはだいたいの人がわかるのですが、一発で正しく入力できる人は半分位です。
●次の四半期の売上目標額を、今期の売上額の5%増で計算します
----この式を私のヒントなしにすぐに入力できた人は、数えるほどしかいません。
この式を立てることができない人には、Excelの授業は一時中断して、算数教室が始まってしまうのです。
私「100円の5%はいくら?」
生徒さん「5円」
私「それを計算するための式はどうなりますか」
生徒さん「100円×0.05です」
私「じゃ、100円の100%はいくら?」
生徒さん「えっ?100円?」
私「100円の5%増はいくら?」
生徒さん「105円、かな?」
私「そう、105円。ということは105円は100円の何%だということになりますか?」
生徒さん「えーっと・・・105%、ですか?」
私「正解です。100円の105%が105円になるためには、どんな式を立てればよいですか」
生徒さん「あぁ、100円×1.05かぁ」
と、一番スムーズに理解してもらえる人でもこんな感じです。
中には「100%=1」ということが、根本的に理解できてない人も少なくありません。そうなると「5%増=105%」にたどり着くまでに大変な時間が掛かりますし、これが「5%増」ではなく「5%減」ともなると、丸1時間費やして説明しなければならないこともあります。
私が子どもの頃から、同級生の中には「計算問題は得意だけど、文章題はさっぱりダメ」という子もいましたが、最近はその傾向が著しくなってきているように思います。
"100×1.05"という計算をすることができても、"100円の5%増"の式を立てられない人が、本当に多いことにショックを受けます。
私は独身で身近に小さな子もいないので、最近の学校教育のことは詳しくわからないのですが、時々テレビなどで「100マス計算」というのが紹介されているのを見ます。「フラッシュ暗算」なんていう物も時々見ます。
最近はやりの「右脳の活性化」につながるそうですが、いずれも「計算の速さ」を競わせるような勉強法に見えます。高齢者がボケ防止にこうしたことをやるのは良いと思うのですが、小さい子どもに「計算の速さ」を競わせることに意味があるのかどうか疑問です。
今はExcelというソフトもあるし、携帯電話にも電卓がついている時代ですから、極論を言えば暗算なんかできなくても良いと思うのです。
私は「計算をする能力」よりも「式を立てる能力」をもっと養うべきではないかと思います。
巷で大流行中の「100マス計算」へのアンチテーゼ本として「絶対学力
内容に対しては、賛否両論あるようですし、私も「100マス計算」のこと自体を詳しくしらないので、断定的なことは何も言えませんが、小学生の子を持つ親も、先生も、その子が30前にもなって、パソコン教室のインストラクターに「100円の5%増」の式の立て方を1時間かけて教わらなくてはならないような教え方、育て方はして欲しくありません。
いくら暗算が速くても、生活や仕事の中では、暗算をする前の段階の「式」を自分で作ることができなくては、何の意味もありません。
上の生徒さんとのやり取りのように、わからなくても考えて答えようとしてくれる生徒さんはまだ良いのですが、最近は、わからない時は黙って俯いているだけで、「わかりません」とも言ってくれない生徒さんも少なからずいます。
質問の仕方を変えようが、こちらも黙って待ってみようが、とにかく私が答えを言うまでは、声も出さず、顔も上げずにじーっと下を向いているのです。
この傾向は、年齢が下がれば下がるほど著しくなります。
学校では、自分がわからなければ、他のわかる子が手を上げて答えてしまいますが、うちのパソコン教室はマンツーマンなので「他の子」はいません。
一所懸命考えているのにわからない人もいるでしょうが、ちょっと考えてわからないと、すぐに考えるのを止めて、答えを教えてもらうのを待つだけになっているような気がします。
それも「わからないから、教えてください」と言うわけでもなく、相手がジレて答えを言うのを待つだけで、能動性がまったくないのです。
これでは、与えられた「100マス計算」を黙々とこなす能力がいくらあっても、コミュニケーション能力も向上心もない、いわゆる「引きこもり」だけが増えてしまうような気がします。
「英語」は、外国人とコミュニケーションを取るために必要なのであって、日本人とも満足にコミュニケーションできないような子に英語を教えても、何の意味もありません。
「100マス計算」で、計算の速さを競わせるのも結構ですが、複雑な文章題を、先生や友達と相談しながら、じっくり解いていくような"算数"も必要ではないかと思います。
最近の小学校が、"計算問題"と"文章題"をどんな比率で教えているのかは知りませんが、私がパソコン教室で教えている限りでは、"文章題"の比率は限りなく低いように感じます。


