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私がクロサワ映画
甲乙つけがたいクロサワ作品の中でも、この「椿三十郎」は何も考えずに楽しめる、エンターテイメントに溢れた作品です。
私はテレビで放送しているのを見たり、DVDを借りてきたりして、学生時代から年に2〜3回見続けています。何度見ても飽きません。
「日本映画は難解・暗い・おもしろくない」と見もしないで最初から決め付けている人も少なくありませんが、わかりやすく軽快なテンポで進むストーリーと、お家騒動を扱いながら、どこか間抜けでお気楽なキャラクターたちが"映画のおもしろさ"を存分に味あわせてくれます。
多分、他の映画やテレビドラマなどで見たような設定やシーンが出てくるはずです。
この作品は、同じ"三十郎" が活躍する「用心棒」と並んで、内外を問わずさまざまな作品に「パクられて」います。それだけ誰が見てもおもしろい、ということです。
難しさも堅苦しさも皆無なので、クロサワ映画初心者にもおススメの作品です。
見所は色々ありますが、三船さん演じる三十郎にくっついて回る、気概はあるけど世間はまったく知らない青年侍グループの中には、加山雄三さんや田中邦衛さんがいます。40年以上前の作品ですから、ふたりとも若いです。でも、今の雰囲気が漂っていて、おもしろいです。
また、ラストの方の、仲代達也さんと三船さんのタイマン抜刀対決は圧巻です。
今のようなCG技術はもちろんありませんから、人の動きだけで「るろうに剣心」のような、ハイスピード抜刀術を披露しなくてはならなかったわけです。
そのために三船さんはスタッフと何度も打ち合わせをして、そのシーン専用の刀を、重さや形や長さに徹底的にこだわって作ったそうです。
また「刀を抜いて一番速く斬るにはどうすれば良いか」を考えて、刀の抜き方、振り方を徹底的に研究したそうです。
で、結局三船さんはどんな刀を使って、どんな抜き方、斬り方をするのか、ぜひ映画を見てください。普通に見ていると、余りにも速くて多分全然見えないと思いますので、スロー再生で見てください。
普通に刀を抜いてから普通に上や横から振り下ろすのでは間に合わないのです。
今回なぜこの作品を記事にしたのかというと、実は今度この作品がリメイクされるらしいのです。
監督の森田芳光さんは、私より少し年上で、自主映画出身の監督ですから、多分黒澤さんには多大な影響を受けていると思います。
森田監督はデビュー当初は「気鋭の新進監督」でした。ハードボイルト系のイメージが強かった松田優作さんを、ただの家庭教師役に迎えた「家族ゲーム」をはじめ、初期の森田作品は、自主映画色たっぷりのヘンな設定やヘンな映像が満載でした。
その後、大ヒットした「失楽園」など、普通の映画監督(良く言えばプロっぽくなった)になってしまったような気がしていました。
その森田監督が、織田裕二くんを擁して「椿三十郎」をリメイクする、というニュースを聞いて、私はちょっとびっくりしました。
黒澤監督と森田監督も結びつかなかったし、三船さんと織田くんも全然結びつきません。"三十郎"は、得体の知れない汚い浪人なんですが、織田くんがやると、ちょっとさわやかすぎて、怪しい感じが薄れてしまうような気がします。
「椿三十郎」の中では、"赤い椿"と"白い椿"がキーワードになっている部分があって、モノクロ映画では表現しにくい「色」を、カラー映画でどう表現してくれるのかは、唯一楽しみな点ですが、後はどうでしょうか。
昔のクロサワ作品がリメイクされるというのは、私にとっては、宝箱に入れて大事にしまってあった宝物を、いつの間にか他人に取られ、みんなに見せびらかされているような気分です。
正直なところ「黒澤さんの映画はそっとしておいてよ」と思います。
そう思っている人は少なくないと思いますし、森田監督よりも黒澤さんや三船さんの年代に近いような人たちは「森田?誰だ?クロサワをリメイクするなんておこがましい」と思っているかもしれません。
それでもあえて「世界のクロサワ」にチャレンジする森田監督にも敬意を表したいと思います。「奇才・森田」の切れ味は「世界のクロサワ」を脅かすことができるでしょうか。




